先日のハムフェア2024にOWONが出展していて、スペアナも展示されていた。少し触ってみて「いいなぁ」と思ったのだけど、当日はそこまで。その後、ふと「試用レポートをブログに書かせてもらえないかな」と思い立って連絡してみたところ、快くOKをいただけた。感謝。
ということで、デモ機をお借りして、いろいろいじってみた。
仕様など
XSA815-TGは周波数の上限が1.5GHzのスペクトラムアナライザ。詳細はこちら。
クラスとしては、RIGOLのDSA815-TGと同じ。最大の違いは、おそらく最小RBW。RIGOLのDSA815-TGの最小RBWが10Hzなのに対して、OWONのXSA815-TGでは1Hz。ただし、というか、だからというか、RBWを小さくするとFFT(併用)になる。境界は1kHzのよう(3kHzまではスイープのみ)。DSA815-TGは全領域スイープ(だと思う。余談ながらDSA815-TGの初期モデルでは最小RBWは100Hz)。
両者の主な仕様の比較をまとめてみる。また、私が最初に使ったスペアナがtinySAなので、その仕様も一緒に並べておく(tinySAのBasicではなく、Ultraのスペックを)。
OWON XSA815-TG | RIGOL DSA815-TG | tinySA Ultra | |
周波数範囲 | 9kHz~1.5GHz | 9kHz~1.5GHz | 100kHz~5.34GHz(6GHz) |
周波数分解能 | 1Hz | 1Hz | |
基準周波数の経年変化 | < 1 ppm/年 | < 2 ppm/年 | |
位相ノイズ @1GHz, 10kHzオフセット | < -80 dBc/Hz | < -80 dBc/Hz | -92 dBc/Hz (at 30MHz) |
位相ノイズ @1GHz, 100kHzオフセット | < -100 dBc/Hz | < -100 dBc/Hz(代表値) | -108 dBc/Hz (at 30MHz) |
分解能帯域幅(-3 dB) | 1 Hz〜1 MHz 1-3-5-10 ステップ | 10 Hz〜1 MHz 1-3-10 ステップ | 0.2, 1, 3, 10, 30, 100, 300, 600, 850 kHz |
ビデオ 帯域幅(-3 dB) | 10 Hz ~ 1 MHz, 1-3-5-10 ステップ | 1 Hz ~ 3 MHz, 1-3-5-10 ステップ | |
DANL ※別表 | |||
マーカ数 | 5 | 4 | 8 |
トラッキングジェネレータ | あり | あり | なし(代りにシグナルジェネレータあり) |
ディスプレイ | 9インチ, 1280 x 800 | 8インチ, 800 x 480 | 4インチ, 480 x 320 |
寸法 | 375 x 185 x 120 mm | 361.6 x 178.8 x 128 mm | 117 x 72 x 23 mm |
重量 | 約3.7kg | 4.25kg | |
表示言語 | 英語, 中国語 | 日本語, 英語, 中国語 | 英語 |
バッテリ | — | — | 3000mAh |
テスト機能 | 隣接チャネル電力比, チャネルパワー, 占有帯域幅, 合否判定 | (オプション) | 多数あり |
価格 | 176,000円 | 183,325円 | US$119.00 (17,448円) |
- DANL プリアンプ off
XSA815-TG | DSA815-TG | tinySA Ultra | |
9kHz~1MHz | -95 dBm(代表値), <-88 dBm | ||
1MHz~500MHz | -140 dBm (代表値), <-130dBm | ||
500MHz~1.5GHz | -138 dBm (代表値), <-128 dBm | ||
100kHz~1MHz | -130 dBm (代表値), <-110dBm | ||
1MHz~1.5GHz | -135 dBm (代表値), <-130dBm | ||
100MHz | -153 dBm |
- DANL プリアンプ on
XSA815-TG | DSA815-TG | tinySA Ultra | |
9kHz~1MHz | -135 dBm (代表値), <-128 dBm | ||
1MHz~500MHz | -160 dBm (代表値), <-150 dBm | ||
500MHz~1.5GHz | -158 dBm (代表値), <-148 dBm | ||
100kHz~1MHz | -150 dBm (代表値), <-130dBm | ||
1MHz~1.5GHz | -155 dBm (代表値), <-150dBm | ||
100MHz | -169 dBm |
箱から取り出した第一印象は、とにかく画面が大きい。視野角も広くて見やすい。
操作感はtinySAとは大きく異なる。以前、DSA815-TGを少し触ったことがあるのだけど、それとほぼ同じという印象(おぼろげな記憶だが)。しかし、tinySAに慣れているので操作に迷うことが多い。他のスペアナを使ったことがないので、これが標準的な操作法なのかは判断できない。
なお、価格は記事執筆時点のAmazonでの売価。tinySA UltraはAliExpress内のZeenKo公式ショップの値段(送料別)。
基本的な測定
ここからは実際に測定した結果。画面表示はボタン一つでUSBメモリに記録できるので、その機能を使用した。画像をクリックすると原寸(ピクセル等倍、つまり、1280×800)で表示される。
放送波
まず、簡単なところで、FM放送帯をスイープしてみた。アンテナは144MHz帯用のJ型(屋外設置)。
従来からのFM放送がいくつかと補完放送もいくつか拾えている。マーカも置いてみた。
また、イヤフォンをつないで聞くこともできた(決していい音とは言えなかったけど)。
ウォータフォール表示。ただし、このスペアナではウォータフォールではなく、Time Specという機能名になっている。
RBWを100kHzにして一つの局にフォーカスした様子。
RBWを変えた様子
tinySA Ultraをシグナルジェネレータ機能を使って、10MHz、-20dBmの信号を入力。
100 Hz
10 Hz
10Hzにするとさすがにスイープ時間が長い。100Hzでは約57秒だったが、10Hzだと約210秒。スパンはどちらも5kHz。
XSA815-TGの位相ノイズは-80dBc/Hz(10kHzオフセット)なので、RBWが10Hzだと、$$-80 + 10 \times log(10) = -70[dBc]$$が限界となる。表示スパンが5kHzのため、10kHz離れたところまでは見えないが、近くでもまぁそれくらいまで見ていてる感じ。
1 Hz
本機の最小RBW。スイープ時間がものすごく長くなるだろうと思ったのだけど、逆に約17秒と、ものすごく速くなった(スパンは5kHzのまま)。なぜだろう?
試しに、スパンを1kHzにしてみたら、スイープ時間はわずか3.5秒だった。
さらに、10回平均。ノイズレベルが下がる。
RBWが1Hzなので、限界は以下の通り。$$-80 + 10 \times log(1) = -80[dBc]$$ノイズレベルが下がって下の方が見えているのが分かる。
高調波
同じく、10MHz、-20dBmで、高調波の様子を見てみた。マーカのデルタ表示機能(とマーカテーブル表示機能)を使ってみた。
tinySA Ultraの高調波の仕様は-40dBc以下。仕様を満足する測定結果(当然ながら)。
変調(AM)
tinySA UltraのSG出力に変調をかけてみた。1kHz、80%のAM。
搬送波と側波帯の周波数とレベルを表示した様子。
二信号
二つのtinySA Ultraを両方ともSGにし、一方から10.000MHzを、もう一方からは1kHz離れた10.001MHzを出力し、それを混合器でミックスしたものを観測する。
まずは、一つ目。10.000MHz、-20dBm。スペアナのRBWは10Hz。
二つ目。10.001MHz、-20dBm。
混合したもの。混合器はトラッキングジェネレータ編で使ったリターンロスブリッジそのもの。
混合器を通すとそれぞれ-6dBになるので、ほぼその通りの結果。しっかりと二つの信号を区別できている。
ちなみに、こちらがtinySA Ultraで同様なものを見た様子(このときは、一台のSGはtinySA Basic)。
tinySA Ultraだと最小RBWが200Hzなので、これが限界。1kHzの差ならまぁ見られるけど、これより近いと重なってしまう。
XSA815-TGだと、RBWを1Hzにすれば、ここまで見える。
とりあえず、ここまで。次はトラッキングジェネレータを使ってみる話。
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