先日のこと、FT8でこんなのを受信した。
※わかりやすさのため、当該通信だけ抜き出した。
そう、同じコールサイン(LZ2xx)の局が同時に送信しているという状態。しかも、割と近い周波数(DF)で。
こんなこと、どうやったらできるんだろうとTwitterに書き込んだら、いろいろとコメントをもらった。結局わかったのは、これは、FT8 DXpeditionモードだということ。
【追記】
コメントで教えいた頂いた。これはMSHVというソフトウェアのマルチスレッド機能らしい。
このFT8 DXpeditionモードというものがあることは知っていたし、こないだはからずもその通信を行う機会もあった。このときは、よくわからない内にできてしまったというのが正解だけど。
ベーカー島のペディションがFT8で行われるらしいし、ちゃんと調べなきゃと思い、公式ドキュメントを読んでみることにした。幸い、日本語版も提供されているわけだし。
FT8 DXpedition Mode User Guide
http://physics.princeton.edu/pulsar/k1jt/FT8_DXpedition_Mode…
FT8 DXペディションモード(※2018/06/27現在、バージョンがやや古い)
https://physics.princeton.edu/pulsar/k1jt/FT8_DXpedition_Mod…
ドキュメントの最初の方で、複数送信に関して以下のように言及されている。
FT0 の DX ペディションモードでは、DX ペディション局(Fox)と呼ぶ側の局(Hounds)の QSO で、Fox 側の送信ができるだけ少なくて済むように工夫されています。更に、複数の Fox が最大 5 つの信号を同時に送信することで、理想的なコンディション下であれば毎時間当たり 500 QSO を行うことができます。
※FT0はFT8の誤記だと思う。
つまり、Fox側は最大で5つの同時送信ができるようだ。Houndの方はもちろん一つだけ。多数のHoundをFox側が効率良く捌くための仕組みなので。
ということで、このモードは、DXpedition専用。一般の通信で用いてはいけない(冒頭のLZ2某がDXpedition局であったかは不明)。
同時送信はFox側の話なのでHound側は気にする必要は関係ないけど、上のドキュメントに興味深い話があったので引用しておく。
N Slots を2以上にすると、送信信号が汚くなる可能性があります。不要輻射を避けるために、送信機器に良いリニアリティーが要求されます。以下の手順で調整するとよいでしょう。WSJT-X のTune ボタンを押し、無変調キャリアを送信します。送信機やアンプを希望するピークパワー、ここでは P0としましょう、に調整設定します。続いて、WSJT-X の右下の Pwr スライダーで、10%ほど、出力を減らします。このオーディオレベルを常に使うようにします。N Slots の場合、平均送信電力は P0/(N slots)となります。また、それぞれの信号の電力は P0/(N slots)2となります。したがって、N Slots が 1,2,3,4,5 と増えていくと、各信号の平均電力は、P0比 0,6,9.5,12,14dB 減少となります。
【追記】
Foxの送信(音声)周波数は300~900Hz。上のキャプチャではDFが1400Hzを超えており、その範囲外。可能性は以下のどちらかか?
- LZ2某がQRGをずらしいている(私は通常のQRG以外を使うことはまずない)。
- FT8 DXpeditionモードとよく似た別の何か(不明)を使っている。
二つの周波数の差が60Hzであり、これは、FT8 DXpeditionモードと一致する。一方、当局のWSJT-XがFT8 DXpeditionモードだと認識すれば以下のポップアップが出るはずだが、このときは出なかった(出てくれば、すぐにFT8 DXpeditionモードだとわかる)。この受信中にはそう認識されなかっただけかも知れれないが。
これだけの情報からは、どちらの可能性も否定できない。
【追記ここまで】
そうこうしている内に、そのベーカー島でペディションを行う局KH7Zを捕まえた。正確には、ペディション前の予行演習(?)みたいだけど。
ウォータフォールも一緒にキャプチャしてみた。確かに、信号を二つ受信している。
KH7Z/MMなので、海上移動中だったのかな?
コメント
MSHV1.79以降のマルチスレッドですね。
ありがとうございます。そういうソフトウェアがあるんですね。調べてみましたが、情報はあまり多くありませんね。一覧代わりに記事にしてみました。
https://www.jh4vaj.com/archives/7377