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テルミンを作ってみた

自作テルミンの衝撃!

今年(2018年)の始め、JO4EFCさんから自作テルミンの発表があった。

テルミンの設計と製作(1)高周波部
http://jo4efc.blogspot.jp/2018/01/1.html

テルミンの設計と製作(2)低周波部
http://jo4efc.blogspot.jp/2018/01/2.html

テルミンの設計と製作(3)エフェクター部
http://jo4efc.blogspot.jp/2018/01/3.html

テルミンの設計と製作(4)完成
http://jo4efc.blogspot.jp/2018/01/4.html

「こういう仕組みなのか。面白い!」と思い、自分でも作ってみたくなった。とは言え、一から手組みするのは大変そうなので、基板を起こそうかと。氏に基板化について確認したところ、ご快諾頂けた。

構想

設計にあたり、基本的にはオリジナルを踏襲する。オリジナルでは基板に乗っていない部品(ボリュームなど)もできるだけ基板に乗せる。配線の手間を減らすため。

エフェクタ部については、できるだけ「自由度」を上げる。つまり、ディストーションやディレイの効き具合等も外から調整できるように。その方が何かと面白いに違いない。

可能ならエフェクタ部にはオーディオアンプの実装も検討する。そうすれば、スピーカ内蔵も可能になる。それを考えると、メイン部とエフェクタ部は独立して使えると融通がききそうなので、電源スイッチはそれぞれに付ける。

回路

上の構想に基づいて設計した回路がこちら。

メイン(高周波)部

※ 図をクリックで拡大。ESCで戻る(または、図以外の場所をクリック)。
※ 赤字は修正箇所(基板パターンカットなど)。

ボリュームは一回路しか使わないが、基板実装タイプだと一回路のものは入手性が悪いので二回路の部品を用いる。エフェクタ部も同様。

エフェクタ部

ディストーション部にはミキサを設け、ドライ(原音)-ウエット(エフェクト音)の調整ができるようにした。

ディレイに関しては、オリジナルでは「ディレイ」として構成してあるが出力をフィードバックさせて「エコー」として使えるようにした。ただし、回路定数はディレイのものを用いている。フィードバックのボリューム(RV3: DLY_RPT)を絞れば繰返しがなくなるので、単純なディレイになる。ディレイ部のミキサはエフェクト音だけが出てきてもしょうがないだろうと思い、原音は固定でエフェクト音のミックス量の調整にした。

全体接続

外部入力が使えるように、メイン部とエフェクタ部の接続はスイッチ付きの3.5ジャック(モノラル)を介している。通常はメイン部から入力され、外部入力用のプラグを挿すとそちらに切り替る。

スピーカは外付けもできるように、こちらも3.5スイッチ付きモノラルジャック経由。また、エフェクタ部に搭載されているヘッドフォンジャックに挿すとスピーカは遮断される。

アンプ部補足
上に書いたようにエフェクタ部にはアンプ回路を載せる。エフェクタ部は+5V動作なので、アンプICにはHT82V739を使うことにする。この石、\(\overline{CE}\)があり、これが電源投入時のポップノイズを消すのに使えないかと思ったがダメだった。

HT82V739 ポップノイズはCEでは消せない
覚書。 HT82V739、電源投入時のポップ音が消せないかと実験。 コンデンサ(C39)のチャージでトランジスタ(Q2)をオンにするという単純な回路。ベースに入っているLEDはQ2のオン電圧に下駄を履かせるため。これで1秒弱でオンになる。C...
HT82V739のポップノイズ、その二
HT82V739のポップノイズを\(\overline{CE}\)で消せなかったという記事を書いたところ、Twitterで色々とコメントを貰った。その中に、\(\overline{CE}\)をトリガにしてVREFなどをオシロで見てみたらとい...
HT82V739のポップノイズ、その三
前回の話はこちら。 この記事に対してコメントを頂戴した。 差動信号を見るのには、Ch1とCh2で測定して差分を出せばよいというのは、まったくその通りで、一応、考えはしたのだけど、外部トリガを使おうにもプローブが二本しかないので諦めていた。で...
HT82V739のポップノイズ、その四
前回の続き。今度はトランジスタではなくシュミットトリガの74HC14を使った実験。回路はこんな感じ。 早速、測定。 まずは、動作確認。Ch1: \(\overline{CE}\)、Ch2: VREF。 さすがに、すっぱりとLowに落ちてくれ...

やるだけムダなことはわかったけれど、何だか悔しいので回路を入れることにした。

もし、この回路をやめるなら、U6、D4、C44、C45、R45が不要。代りに、JP3をショートして\(\overline{CE}\)をGNDに落とす。

パイロットランプのLED(D1)は、ポップノイズ防止(もどき)回路を入れるなら、JP2は1-2間を接続する。ミュートが解除されたタイミング(この回路の定数では1秒弱)で点灯する。輝度調整用R35の値は任意だけれど、7W14(74HC14のミニ版)で直接ドライブしているので下限は900Ω程度にしておくのが無難だと思う。この回路を入れない場合は、LEDは純粋に電源ランプとして使うため、JP2は2-3間を接続する。

基板

Elecrowなどでは、基板サイズは10×10cmまでが安い。というか、これを超えるととたんに値段が上がる。なので、基板は一枚ではなく、二枚に分ける。

当初、このサイズだけを気にしてレイアウトしたのだけど、よくよく考えたらケース(タカチ TW11-5-22詳細PDF))に収まらない。また、エフェクタ部はボリュームなどが多すぎて基板に並びきらないので、子基板を作り、一部のボリュームなどをそちらに実装して、ケース上部に出す。そうするとケースと基板の間にその分の空間が必要になり、普通に実装したのではボリュームなどの位置が下過ぎて使いづらい。そこで、そうした部品は基板の裏に実装することにした。そんなこんなで、レイアウトは何度もやり直した。

思ったよりも「土地」が狭かったので、表面実装部品を積極的に使うことにした。その方が部品の足を切る手間がなくて楽だというのもあるし。パスコンは基本的にすべて表面実装。抵抗も同じ値がたくさんあるものはそうした(全部の値のものを購入するのは不経済なので)。あとで定数変更するかもしれないものはリード部品にしておいた(これも経済性優先)。

メイン部

エフェクタ部

基板を発注して、一週間で手元に届いた。

Elecrowから基板が到着
14日の夜に発注して、もう届いた。日数にしてちょうど一週間。しかも、ガーバーファイルの問題を指摘してくれてたので、修正のために一日ほどロスしているはず。土日も入っているし。 配送はOCS/ANA Expressを選択した。どこが持ってくるの...

部品

メイン部の発振回路周りのCは、温度特性を考慮して、ポリプロピレンフィルムコンデンサ(千石で入手可)か、温度補償型のセラミックコンデンサ(秋月)。エフェクタ部のディレイ周りLPF用のコンデンサも同様にポリプロピレン。

カップリングコンデンサで、極性をどうすべきか悩ましいところは無極性にした(回路図に示した通り)。

ケミコンは、ニチコンFG(秋月で安い)が載るようにしたつもりだったけれど、メイン部の100µFはサイズを間違えてしまった。ニチコンKAなら載る(千石)。

チップ抵抗とコンデンサは比較的大きめに。チップ抵抗は3216(1206)サイズ。チップコンデンサは2012(0805)サイズ。

IFTは、千石でもマルツでも入手可。

トロイダルコアとケースは千石で。

基板実装用のトグルスイッチはマルツ。

セラミック発振子とポリバリコンはaitendo。ポリバリコンには延長シャフトを使ったが、これは(aitendoよりも)千石が安い。

基板実装用のボリュームはどこでも手に入るけれど、安いのはaitendo(品質は?)。千石には一回路のものもあるみたい(が、安くはない)。

ロッドアンテナはAmazonで見つけた安いもの。

基板用のコネクタは極一般的なJSTのXH。eBayに出来合いのものがあったのでそれを利用した。プラグ・ソケットのセット、ピン数、本数、ケーブル長、様々な選択肢がある。

⇒ eBayでXHコネクタを探す

その他は、秋月で手に入るはず。AliExpressやeBayも活用した。

組立て

部品実装

ボリュームやスイッチを基板の裏に実装するという変なことをやったため、勘違いが生じて、そのあたりに修正(パターンカットとストラップ)が必要になってしまった。これは、上の回路図に赤で示した通り。

LEDの電流調整用のRは、使うLEDの仕様と明るさの好みに応じて適当に。

電源部の1000µFは高さがありすぎたので、寝せて実装。

エフェクタ部の子基板との接続は、子基板側はコネクタを使わずにケーブルを直接ハンダ付けした。保護のため、基板とのケーブルの部分をホットボンドで固めた。余談ながら、最近は、ホットボンドよりも「グルーガン」の方が通りがいいようだ。100円ショップではグルーガンと言わないと通じなかった(ダイソーもセリアも)。

電源スイッチは、上に書いた通り、各基板にそれぞれ実装した。もし一つにするなら、メイン部に+12V OUTのコネクタが付けられるようにしているので、これをエフェクタ部の電源に入れる(エフェクタ部の電源スイッチは省略してジャンパでON状態にする)。

基板取付のスペーサは、子基板のスペースを確保するため、20mm。


ヘッドフォンジャックも基板裏に実装するつもりだったのだけど、表実装でパターンを引いてしまっていた。しかし、ジャックの位置が下がったためボリュームのツマミとの距離が取れて、却って使いやすい。ということにしておく(笑


ケースの穴あけを失敗したところは、ホットボンドで埋めた。ビニルを敷いた上にケースをおいて、そこにホットボンドを流すと、ビニルからは簡単に剥がれるので上手い具合に埋まってくれる。もしはみ出てしまたらカッターナイフで削ればOK(柔らかいので簡単)。

しかし、ネジが物々しいなぁ。皿ネジを使ってフラットにすれば少しは物々しさが軽減するかな?

調整

まずは目的の周波数で発振してくれているかどうか。セラミック発振器による455kHzが一番簡単なので、これから確認した。

続いては、ビッチ用の発振周波数のチェック。外付けのポリパリコンとそれとパラに入っているL、Cで周波数を決めるわけだけど、オリジナル回路の定数では上手くいかなかった。また、人体を近づけることによるピッチの変化量が小さく、なんとか広げようとLを大きくCを小さくした(Cの変化量が相対的に大きく効くように)。結果、上の回路図に赤で示したように、Lを330 + 470µH、基板上のCは削除とした(ポリバリコンは40pF側を使用)。

ボリュームコントロール用の方も同様。しかし、こちらはどうにも上手くいかず、Lはオリジナルのまま、基板上のCを220pFと大きく、ポリバリコンも140pF側と大きな方を使った。お陰でポリバリコンの調整がクリチカル。もっと頑張れば、基板上のLとCの上手い組合せが見つかるかもしれない(ポリバリコンの40pF側を使えるように)。

その他、調整としては、オリジナル回路の説明にある通り、DBM(NJM2594)の5pin(セラミック発振側)が600mVpp弱、7pin(LC発振側)が100mVpp弱程度になるように各IFTを回す。発振周波数やこの電圧調整のために、オシロスコープが必須。

動作の様子

ピッチの変化量が小さく、試行錯誤の結果、人体アースを取ると多少広がることがわかった。上のビデオでは比較的初めの方で人体アースを取っている(コネクタのGNDに触れているだけだけど)。その後は、エフェクタの効き具合のデモンストレーション。残念ながら、曲の演奏には至っていない。

人体アースでなく大きなカウンタポイズでも多分可。オシロのプローブでGNDを掴んでいる状態でも人体アースと同等の効果あり。オシロの電源は切っていてもOK。しかし、オシロを電源コンセントから抜くと効果減。ということで、人体アースが現実的。

実は、人体アースを取った方が動作が安定するんじゃなかろうかという気がしていたので、メイン部のネジ穴パターンの一つだけGNDに接続しておいた。ここからアース用の線が出せるはず。

課題等

基板のミスは上に書いた通りなのでおいておくとして、一番の課題は音域の狭さ。せめて2オクターブ半くらいは欲しいところ。うーん、何かいい方法はないものか?

すべてのコネクタをXHで統一したのは失敗。せめて、電源コネクタは別にすべきだった。一度、間違えて電源をスピーカ出力につないでしまった。一瞬でIC(HT82V739)が破損。ソケットを使わずに直付けしていたので、泣いた…。こういう事故を防ぐためにも、せめて電源コネクタは分けるべき。XHは2.54ピッチなので、この基板でも他にも実装できるコネクタはあるだろう。

実験中は電池(18650 × 3)を使っていたので気づかなかったが、ACアダプタにするとノイズが入る。これは、内部のビニル線の引き回しの問題の気もする。何しろ、出来合いケーブルの長さの都合で高周波部の上をまたがせたので。二つの基板の両方に電源を供給することを考えて、ケースの中央にDCジャックを付けてしまったのが失敗。メイン部の電源コネクタの近くにDCジャックを配置すればよかった。

メイン部のDBM(NJM2594)からのしゅつりょくのCRによるLPF、うっかりして部品配置があまり良くない。もし、基板を作り直すことがあれば、ここも要対応。

ディストーションは、効き具合の調整で音量が変化するのが少し気になる。

課題というわけでもないが、ディレイの出力のミキサは、ドライ(原音)-ウエット(エフェクト音)式にして、原音を絞れるようにしても良かったかもしれない。そうすれば、いっこく堂ゴッコができる(笑

自分でもやってみたい人、いますか?

もし、「自分も実験したい!」と言う方がいらっしゃれば、基板をお分けします。手持ちの部品もいくつかあるのでそれと合せて、実費程度で。これをベースに改良や新たな発展をさせみませんか?

興味があれば、こちらに連絡用のフォームを置いてあります。

メールで連絡
https://www.jh4vaj.com/send_mail

これにお書きいただければ、私にメールが届きます。

おわりに

今回の実験、とても面白く、いろいろと回路の勉強にもなった。こんなに興味深いものを発表してくれたJO4EFCさんに改めて感謝。回路構成等でわからない点が出てきたときには都度お答えいただくと同時にそれ以上の回答をいただけた。本当にありがとうございました。

下の写真は、JO4EFCさんのオリジナル機と一緒に撮らせてもらったもの。手前が本機、スピーカに乗っているのがJO4EFCさんのオリジナル機。

このとき、同時に動作させると、互いに干渉してしまうことを発見。当然ではあるけれど、それを目の当たりにするとやっぱり驚く。テルミンを複数並べて使うには、ある程度距離を離すか、周波数を変える工夫が必要。

参考記事等

インターネット上に公開されているたくさんの資料を参考にさせてもらった。中でもちょくちょく参照させてもらったものを挙げておく。

エコー用IC 【PT2399】 使用レポート
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/179.htm…

簡単なオーディオミキサー
http://www.zea.jp/audio/schematic/sc_file/026.htm

ブレッドボードディストーション
http://www.analogfeeder.com/?p=415

ブレッドボードディレイ
http://www.analogfeeder.com/?p=507

PT2399データシート
http://www.princeton.com.tw/Portals/0/Product/PT2399_1.pdf

AD8532データシート
http://www.analog.com/media/jp/technical-documentation/data-…

ANALOG DEVICES APPLICATION NOTE AN-581
http://www.analog.com/media/en/technical-documentation/appli…
Figure 2. 単電源オペアンプでのバイアスの掛け方

ありがとうございました。

自作
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