先日、温度調整機構付きはんだゴテのちょとした比較をした。
今回は、メーカさんからデモ品をお借りできたので、実際の使用感を。
仕様比較
白光には、FX-600の他に、よく似たFX-601がある。しかも、オプションで用意されているバーツを使えば、互いに変えられるらしい。つまり、FX-600をFX-601にすることができる。ざっくり言えば、基本部は同じでコテ先違いという感じ。
比較しやすくするため、メーカサイトから仕様を抜き出して表にしてみる。
FX600-02 | FX601-01 | |
---|---|---|
消費電力 | 50W | 47W |
設定温度範囲 | 200~500℃ | 240~540℃ |
リップル温度 | 無負荷時±1℃ | 無負荷時±1℃ |
ヒータ | セラミック | セラミック |
標準こて先 | B型 (品番 T18-B) | 6.5C型 (No.T19-C65) |
全長 | 233mm | 233mm |
重量 | 61g | 68g |
ケース | なし | あり |
Amazon価格(税込み) | 3,809円 | 4,251円 |
FX-601の方が消費電力がやや小さいが、温度範囲は高めに設定されているようだ。また、重要もFX-601の方がやや重い。
ちなみに、交換ヒータはFX-600とFX-601で共通。A1600という型番。
A1600
http://www.hakko.com/japan/products/search_result.php?k=A160…
コテ先のバリエーションはFX-600の方が圧倒的に多い。
T18シリーズ(FX-600対応)
http://www.hakko.com/japan/products/hakko_fx600_tips.html#pr…
T19シリーズ(FX-601対応)
http://www.hakko.com/japan/products/hakko_fx601_tips.html#pr…
余談ながら、2017/11/12時点ではFX600-02のAmazon価格は3,936円だったので、この一カ月で127円下がった。
メーカに質問
パーツを変えれば互いに「相当品」にできるようだけど、消費電力や温度設定範囲が違ったりするわけで、このあたりは実際のところどうなんだろう?このあたりがよくわかららないのでメーカに質問してみた。
質問
FX-601をB3730(袋ナット・保護パイプセット)に変更すればFX-600になるとあります。
このFX-601にB3730を付けた状態では、温度はどうなるのでしょうか?
目盛り通りの温度になるのでしょうか?それとも読替えが必要なのでしょうか?両モデルでは温度目盛が異なっている点が気になっています。また、FX-601+B3730でT18-Bのコテ先を付けた場合と、FX-601にT19-Bを付けた場合とでは、使用上どのような違いがあるのでしょう?
用途は主に趣味の電子工作です。プリント板へのハンダ付けが多いですが、
ときにはコネクタ類にもハンダ付けします。一番大きなものは、同軸コネクタです。
この質問に対して次のような回答を頂いた。
- FX-601にB3730とT18こて先をつけた場合、温度は目盛り通りではなくFX-601の表示より高くなる。
- 反対に、FX-600にT19こて先をつけた場合は、表示よりも低い温度になる。
- 主な用途がプリント基板へのはんだ付けならFX-600をベースとして使用し、同軸コネクタなど大きい部品で熱が足りない場合には、T19こて先に変更(B3720)するのが使いやすいだろう。
どうやら、パーツ交換はできるけれど温度設定は目盛り通りにはならないようだ。コテ本体とコテ先の組合せの温度関係を簡単にまとめるとこうなる。
- FX-600 + T19 → 設定温度よりも低くなる
- FX-601 + T18 → 設定温度よりも高くなる
それから、メーカ側からデモ機の用意があるというお話を頂いた。個人でも貸し出してくれ、しかも無料。期間は一週間程度。返送料は借りた者が負担。とは言え、言い換えれば返送料の負担だけで実機を試すことができるわけで、それなら借りない手はない。
デモ機到着
折角の機会なので、次の組合せでお借りすることにした。
- FX-600
- 本体: FX600-02
- コテ先
- T18-B(標準セット品)
- T18-CF3
- T18-C5
- FX-601
- 本体: FX601-01
- コテ先
- T19-B
- T19-C3
- T19-C65(標準セット品)
送られてきたもの一式。
この他に、送り状と、アンケート用紙。
まず、取説を見て気になったというか、驚いたのが出荷時の温度設定。
- FX600-02: 370℃±10℃
- FX601-01: 410℃±10℃
なぜこんなに違う設定にしているのだろう?それから、「温度設定を変更する際や、こて先、ヒーター温度を変更する際は温度校正を行ってください」とも書かれている。個人の趣味で使う範囲ではなかなか難しいが…。
では、コテ先の比較。
写真、上がFX601-01で、下がFX600-02。それぞれ、標準のコテ先を付けた状態。FX601-01の標準コテ先は非常に太い。
太いコテ先の比較。T19-C65(FX601-01の標準)とT18-C5(FX-600用)。
ヒータは共通。つまり、穴の大きさは同じ。T-19(FX-601)がいかに肉厚だかよく分かる。
「温度校正をするように」と取説にあったこともあり、試しにコテ先の温度を測ってみた。
手持ちの温度計(K型熱電対+マルチメータ)ではなかなか値が安定せずにうまく測れない。この表示もたまたま「その瞬間」の数字にすぎない。専用の測定設備を持っていないので、温度校正は現実的ではない。
その温度設定目盛りはこんな感じ。
数字のところにはクリックがある。が、中間にも設定できる。
使用感
実際に持ってみると、太く感じる。長年、コテペン40という半田ゴテを使ってきて、その感覚があるからだろう。下の写真がコテの大きさの比較。上からこの順番。
- FX601-01 + T19-B
- FX600-02 + T18-B
- コテペン40
どれもコテ先は同じ程度の太さ。
重さも、やはりコテペン40が一番軽い。FX-600とFX-601の重さは仕様上からもあまり差はないのだけど、バランス的にはFX-601は先端が重いのでやや変な感じ。これも「比べてみれば」だし、慣れの問題でもあろう。
コテが温まるのも早いが、ストップウォッチで計ったわけではないので、こんなものかな、という印象。コンセントに挿して、ちょっと何か準備をやっていればすぐに使える感じ。
プリント基板のハンダ付けでは、FX-600の方かいいかな。FX-601でももちろん問題なくハンダ付けできる(コテ先はT19-B、T19-C3を試した)。しかし、特にFX-601とT19-C3の組合せでは、少し長めにコテを当てるとスルーホールの反対側にハンダが流れ出やすい。熱容量が大きいためだろう。わかっていれば手早くハンダ付けできるとも思う。とは言え、FX-601は見た目も太いのでそう言う意味でもプリント板での使用には不釣り合いか。
コテペン40との比較では極端な違いは感じないが、なんとなく、FX-600の方がスムースな感じ。コテが温まりすぎないとか、ちょっと広いパターンでも熱が持っていかれないとか、なんとなくそんなふう。
同軸コネクタ(いわゆるMコネ)のハンダ付けでは、やはり、FX-601 + T19-C65の圧勝。このコテ先、60Wのコテよりも太い。
これだけ太いとコネクタがすぐに温まってくれる。手早くやるならこれに限る。FX-600にT18-C5でもかなり太いけど使用感はだいぶ違う。単にコテの先端の太さだけではなく、コテ先全体の太さの違いが大きいのだろうか?とは言え、FX-600 + T18-C5でもコネクタを温めるのに少し多めに時間がかかるだけで、ハンダ付けはスムース。それどころか、T18-CF3やT18-Bでも温めるのに時間はかかるが、ハンダはきれいに流れてくれた。これが温度調節機構の強みだろうか?そうではない半田ゴテ(コテペン40など)だとコネクタが温まりきらずに上手くハンダが流れてくれないのだけど。
また、この同軸コネクタのハンダ付けの際は温度設定を高めにした方が良かった。FX601-01の初期設定が410℃になっているのもこういう「大物」をハンダ付けすることを想定したものか?
続いて、ポリウレタン線(UEW)の被覆剥がし(溶かし?)はFX-601 + T19-C65がダントツ。あっという間に被覆が溶けてくれた。こればかりは他の組合せとは大きな差を感じた。もし、こういう作業が多いなら、T19-C65は絶対に使うべきコテ先。
ちなみに、ヒータの形状は丸なので、C型(竹槍型)のこて先のように向きのあるものでも好みの方向に向けて取り付けられる。電源コードがどうしてもクセを持つのでコテ先の向きが自由なのは助かる。コテペン40のそれは平板なので、コテ先の向きが強制される。
互換性
FX600とFX601、互いの袋ナット・保護パイプ、それとコテ先を入替えて試してみた。当たり前だけど、何ら問題なく使えた。温度目盛と実際の温度が一致しなくなるとのことではあったが、正直なところ、その点についてはよくわからなかった。目盛りの数値ではなく、ハンダの溶け具合を見てダイヤルを設定すればいいのかなと思う。
再びメーカに質問
少し気になることがあるので、メーカに聞いてみた。
- FX600-02とFX601-01、ヒータは同じなのに消費電力が違うのは?
コテ先の形状(サイズ)の違いのため。FX601-01のコテ先は大きいので、一旦温まると冷めにくい。よって、安定時の消費電力は下がる。
-
FX601-01の出荷時設定温度が410℃と非常の高いのは?
FX601-01は元々ステンドグラスのハンダ付けのためのもの。そのため、コテ先も大きく、設定温度も高い。
なるほど。そう言われて、メーカサイトのステンドグラス用のページを見たら、そちらにもFX601-01の案内があった。
ホビー/ステンドグラス
FX601-01
http://www.hakko.com/japan/products/hakko_stained_glass_fx60…
こちらには作業対象と設定温度の目安も記載されている。
また、このお話を伺った際に、温度が高いとコテ先の傷みが早いので、必要以上に高くしないようにとのアドバイスを頂戴した。
結局、購入したのは?
FX-600とFX-601を使い比べてみて、一般的な電子工作の範囲ならFX-600の方が良いという印象を持った。もし、どうしても太いコテが必要になったら、オプションパーツが用意されているわけだし。また、私の手元には60Wのコテもあるので、とりあえずはそれでいいかなと。そんなにしょっちゅう同軸コネクタのハンダ付けをやるわけでもないし。
ということで、FX600-02を購入した。コテ先は、標準のT18-Bだけでもいいかと思ったけど、T18-D24(マイナスドライバのような形状)が気になったのでこれも一緒に。そして、ついでにコテ台のFH300-81も。
購入前に実際に試せるのは非常にありがたい。安心して購入できる。白光さん、ありがとうございました。
コメント
ただいまはんだごてを選んでおり、この比較がとても参考になりました。
私はステンドグラスなどでの利用ではないので、一般的な使用に向きそうなFX600にしようと思います。
ありがとうございます。
役に立ったとのこと、嬉しく思います。2.4D型のコテ先と合せて、快適に使っております。
返信ありがとうございます。
さっそく2.4D型のコテ先もあわせて購入しました。
しかし使用目的とは違うものですが、自分では手に負えない故障が別のもので見つかりました。
実際にコテを振るうのはまだ先になりそうです。
一応のご報告まで。