いきさつ
やたらと長いタイトルだけど、まさにその通りの話で、ディスクリートオペアンプOPM11を使ったヘッドフォンアンプをテストしていたときに遭遇した現象。
音が問題なく出ている状況で、電源スイッチを切ってすぐに入れると音が出ない。切ったあと、しばらく待ってから入れれば問題ない。待ち時間が短いと、電源投入直後は音が出るけど、数秒で出なくなるということも起きたり。
という話をTwitterに書いたら、OPM11の開発者さんからコメント頂戴した。このスレッド。
この話は一月の頭ころだったので、それから二か月半くらい経ってしまったけど、追試を実施した。
まず、この現象が起きたときの条件。
- 単電源動作(+12V)
- 電源を切ってすぐに入れる
そして、DCサーボ用のオペアンプをいくつか試してみて、現象が起きないものがあることも確認した。現象が起きないオペアンプはLM358とNJM3404でいずれも単電源用オペアンプ(上記スレッド内にその話もあり)。
回路
回路はOPM11の評価基板とほぼ同じ(片ch分)。

電源部。

これはOPM11の評価基板にはない。OPM11の評価基板では両電源を使用することになっている。単電源でも動かせれば便利なので、安直に抵抗分圧(4.7kΩ✕2本)で中点を作ってGNDにしている。
両電源はスクリューターミナルにしたので、逆接続をやらかしかねないだろうから、ダイオードで簡単な対策をしている(結果、+と-を逆につないでも動く)。
実験と結果

上記のスレッドで「電源が単電源だからでないか」という指摘ももらっていたので、単電源と両電源の両方で動作を確認する。単電源は上の写真にあるバッテリ(18650✕3の約12V)。両電源はREGM05(±5V)と、±15Vの安定化電源の二つ。
結論から言うと、両電源では実験したすべてのオペアンプで動作に問題はなかった。±5Vと±15Vのどちらも、電源を切ってすぐの再投入でもちゃんと音は出てくれた(もちろん、数回ずつは試した)。
問題が起きるのは単電源動作の場合。問題を確認下のオペアンプは以下の通り。
NJM2068D、NJM5532DD、NJM2114DD、NJM4580DD、NJM2749AD、TL072L(UTC)
電源を切ってから再投入までに必要な休息時間(?)はオペアンプによって異なる。数秒から数十秒というところ。ただし、TL072Lは非常に長く、数分間、空けなければダメ。おそらく、JFET入力でインピーダンスが高いため、DCサーボ回路のコンデンサのチャージがなかなか抜けないのだろう。あ、でも、NJM2749ADもJFET入力だけど、これはそんなに長時間待たずに復活する(他のバイポーラ並)。となると、別の理由か?
「オペアンプの出力反転が原因ではないか」とのコメントを頂いていたが、NJM2068、NJM5532、NJM2114、NJM4580は日清紡のFAQの中に出力反転現象を起こす製品として挙げられている。
一方、単電源動作でも問題が起きなかったオペアンプは以下の通り。
LM358N(フェアチャイルド)、LM358N(HTC)、NJM3404AD
実質、二種類しか調べていないが、どれも単電源用オペアンプ。また、上の日清紡のFAQにも「単電源オペアンプは、入力信号を最低電位であるGND電位もしくはV–電位迄入力しても、出力反転現象を起こしません。」とあるので、やはり、出力反転現象が起きて、DCサーボ動作に以上が起きたということだろう。何かそういう現象を見られないかと思ってオシロスコープも持ち出してみたが、はっきりわかるものは捕まえられなかった。
まとめ
まず第一に「電源は両電源を使え」これに尽きる。
どうしても単電源で使いたければ、DCサーボ用のオペアンプは単電源オペアンプを。LM358はクロスオーバ歪があるので、GNDレベル付近での使用になること考えると避けたほうが無難かも。ということで、NJM3404ADが第一候補になるだろう。
OPM11の評価基板では、DCサーボ用のオペアンプにはNJM2749ADが指定されている。低入力オフセット電圧、低温度ドリフトと、DCサーボ用としてとても良さげ。しかし、これも残念ながら単電源動作では問題が発生した。その点とは別に、このオペアンプは最低動作電圧が±6Vと少々高めなのが使いづらいところ。そのために別のオペアンプを使ったのが今回の事の始まりだったりする。
実験ではNJM2749ADも±5Vでも問題なく動作してくれたが(逆接保護ダイオードが入っているので、実際にはもうちょっと低くなる)。とはいえ、±5Vではアンプ(OPM11)自体の動作がちょっと厳しく、(かなりの)大音量では歪む。それも考慮すれば、±7V~±9V程度で使うのが多分良いのだろう。
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