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IC-705用PD電源アダプタ

USB PD対応の充電器やモバイルバッテリにトリガケーブルをつなぎ、15V出力でIC-705を動かしている例をちょくちょく見かける。IC-705の定格は13.8V±15%なので、上限は15.87Vだから15Vなら範囲内だし。

でも、余裕が0.87Vしかないと考えると、ちょっと怖い。少しでも上振れたら超えちゃいそうだし、定格内とは言え上限近くで使い続けるのはなんとなく気持ち悪いというか。

ちなみに、FT-818NDも13.8V±15%でIC-705と同じ(実機は持っていないので、オンラインで公開されているマニュアルを参照した)。ただ、こちらは、別途、「使用可能電圧 : 8.0 ~ 16.0V」という表示もあったりする。いずれにしても、15V供給では上限の余裕が少ないことには違いはない。

電圧低減アダプタ

というわけで、簡単な電圧低減アダプタを作ってみた。

寸法は、長辺が100mm、短辺が約30mm(ケーブルを除く)。

単純にシリコンダイオードで電圧を下げるだけ。一つだと電圧降下は0.7Vくらいだろうから、二つにした。1.4V下がってくれれば、計算上では13.4Vになるのでちょうど良さそう。

それだけじゃ芸がないので、簡単なノイズフィルタも入れた。

実測

電圧

入力側(USB PD出力)出力側(IC-705入力)
無負荷(基板上のLEDだけ)15.18V14.50V
IC-705 受信15.16V13.73V
IC-705 送信(10W)15.13V13.40V

USB PDからの出力は懸念した通り(?)ちょっと高目のよう。定格の上限まで0.7Vくらいしか余裕がない。出力電圧は、ほぼ目論見通りに下がってくれている。受信時と送信時とで電圧が違うのは、ダイオードのVFが電流によって変化するため。まぁ、これも想定通り。

ダイオードのVFは温度によっても変化する。送信時は、ダイオード自身が発熱によって電圧がじわじわ動く(上の値はしばらく送信を続けてだいたい落ち着いたときのもの。

なお、送信はCWモードで連続送信。出力設定は100%(10W)。

ノイズ(リプル)

まず、無負荷。

上の黄の波形(CH1)が入力(USB PD出力)。下の青の波形(CH2)が出力(IC-705への供給 – これは無負荷なので供給はしていないが)。なお、CH1は10mV/div、CH2は5mV/div。さすがに無負荷だとほぼ完全にノイズは消えている。

続いて、受信時。

入力側のリプルは明らかに増えている(自動測定の値で31.82mVpp)。出力側にも多少出ているが、入力側に比べてかなり小さい(5.600mVpp)。

送信時(10W)。

だいぶグチャグチャになって同期が取りづらい(水平軸のスケールは先程までとは変えた)。

時間スケールを(さらに)長くしたものがこちら。

入力側のノイズは約80mVppで、出力側は約20mVpp。フィルタがちゃんと機能しているようだ。

発熱

ダイオードは発熱するだろうとは思っていたが、予想以上に熱い。一瞬なら手で触れるけれど、触れ続けるのは無理。

IC-705の10W送信時の消費電流は仕様では3.0Aだそうで、ダイオード1本あたりの降下電圧は実測結果から(15.13 – 13.40) / 2 = 0.865[V]なので、0.865 * 3.0 = 2.595[W]の損失が生じてることになる。そりゃ熱いわ…。

ダイオード(ER504)の仕様書によると、(ジャンクション)熱抵抗RθJAは20[℃/W]とのこと。損失が2.595[W]なので、ジャンクション部の発熱は2.595 * 20 = 51.9[℃]。周囲温度が30[℃]なら、ジャンクション部は81.9[℃]となる(計算方法を間違えていなければ)。仮に真夏で周囲温度が40[℃]なら、ジャンクション部は91.9[℃]。もっと悪条件で50[℃]の環境であったとしても、ジャンクション温度は約100[℃]程度。このダイオードの動作温度TJの上限は150[℃]なので、問題ないはず。

実験では10Wの出力に設定してCWモードで連続5~6分程度の送信を数回行った。この範囲では特段の異常はなかった。余り長い時間の送信を行うとIC-705のほうが持たない(温度が上がると自動で送信出力を落とす)。

回路保護のために熱収縮チューブを被せたが、ダイオードの発熱によってその周辺が柔らかくなるので、熱収縮チューブを二重にした。


なお、今回使用したUSB PD充電器はこちらのもの。

トリガケーブルはこれ。

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