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スイッチングACアダプタ + リニアレギュレータ ~ その2

背景(これまでの話)

スイッチングACアダプタの後ろにリニアレギュレータを付けてノイズの低減を図ろうという話の続き。前回の話はこちら。

この実験で目論見通りにスイッチング由来のノイズを消すことができた。しかし、レギュレータの発熱が大きいことが問題。9V入力でも、1.67A(5V)を流してしばらくすると相当な温度になる(レギュレータに熱電対を当てて温度を測定したら約130℃だった)。放熱器が不充分ではあるのだけど、もうちょっとなんとかしたい。

そこで目を付けたのが電源入力部に入れてある逆接保護のダイオード。

電圧降下を抑えるためにショットキーバリアダイオードにしていたのだけど、逆にここで積極的に電圧を降下させれば、その分、レギュレータでの発熱が抑えられるはず。

というわけで、一般的なシリコンダイオードにしてみようと思ったのだけど、5Aクラスのものだと入手難(秋月にない)。ファストリカバリーダイオードなら大電流タイプが入手できる。ということで、それに変えてみる。

品名VF @5A
ショットキーバリアダイオードSBM1060LSS0.4 V
ファストリカバリーダイオードER5041.25 V

5Aも流すわけじゃないので実使用時のVFはもっと小さいだろうけど、それでも少しは期待できるのではないかと。

実験

入力電圧: 9V

電圧

まず、各部の電圧をチェック。電流1.67A時(負荷は3Ωの抵抗)。

DCジャックのところが9.00V、フューズを出たところが8.94V。

次に、ファストリカバリーダイオードを出たところが8.16V。つまり、このダイオードで約0.8Vの電圧降下を生じている。1Vくらい落ちてくれることを期待したのだけど、そこまでではなかった。そして、ダイオードからだいぶ離れたところ(レギュレータの入り口付近)で8.11V。基板上で0.05Vほど落ちているようだ。

最終的な出力電圧(出力端子)は4.924V。

発熱

しばらく(10分以上)通電したところで、レギュレータ部は120℃程度。ダイオードを変える前は約130℃だったので、低下してはいる。もっと落ちてほしかったが、ダイオードによる電圧降下がさほどでもなかったので、こんなものなのだろう。

そして、そのダイオードの発熱。こちらも結構熱くなっている。約90℃(ダイオードの足で測定)。ショットキーバリアダイオードだと手で触って「暖まっているな」という程度だったが、こちらは明らかに熱い。手が触れた瞬間に反射的に手を引っ込めてしまう(約90℃なんだから当然だろう)。期待したほどの電圧降下ではなかったとはいえ、0.8Vほど落ちているわけで、1.67A流れているということは、ここで1.3W以上が熱になっているのだから、そりゃ熱いわな。

出力波形

前回と比べてレギュレータへの入力電圧が下がっただけなので変わらないと思うが、念のため測定。

無負荷時。前回同様、Ch1(オレンジ)が入力電圧波形(フューズとダイオードの間)、Ch2(青)が出力波形(出力側コンデンサの足)。スケールは、Ch1が100mV/div、Ch2が10mV/div。

続いて、負荷抵抗3Ωをつないだ状態(1.67A出力)。前回同様、入力にあったスパイク状のノイズは出力側には見られない。

入力電圧: 12V

前回の測定では13.8Vで試したが、発熱が大きすぎて10秒位で出力電圧が落ちてしまった(保護機能)ので、今回は12Vで試してみた。しかし、それでも1分も経たずに出力電圧が落ちてしまった。やはり、この放熱器だと、12Vのような高めの電圧で大電流を取り出すのは無理なようだ。

出力波形も良くない。無負荷時は問題ないが、1.67Aを流すと出力側にノイズが抜け出してくる。入力に含まれるノイズはこちらのほうが小さいのだけど。発熱が大きすぎてノイズが漏れ出すのか?出力電圧が落ちる前に測定したのだが。詳細は不明。

なお、ACアダプタは外付けHDDケースに付いていたもの(3A仕様)。

おまけの実験

ふと、レギュレータに入る前のノイズの状況はどうなのだろうと思い、測定してみた。入力電圧は9V、負荷は3Ω(1.67A出力)。

何と、この時点ですでにノイズが消えている。ということは、レギュレータは不要で、単にLとCだけで良い?Lもインダクタンスが小さいのであまり効いていないかもしれないけど、電源接続時の突入電流を下げる効果も少しはありそうなので入れておいたほうが良いのではないかと思う。

このことから考えるに、入力に5VのスイッチングACアダプタを使用するという手もありそう。この場合は逆接保護ダイオードは入れるべきではない(電圧降下してほしくないので)。フューズも省略したほうがいいかも。

まとめ

ダイオードによる電圧降下でレギュレータの発熱を少しは低減できることが確認できた。とはいえ、やはり、1.67Aくらいの大きな電流を連続で取り出すのは無理がありそう。

ダイオードをさらに増やせば(直列接続)電圧降下を大きくできるが、一方で、電圧降下が大きすぎでレギュレータの仕様に合わなくなってしまう。9V入力で使うなら、この程度がおそらく限界。逆に入力電圧が12Vのように高めであるなら、その分、ダイオードを増やしたほうが良さそう。とはいえ、熱になるだけなので、電力の無駄ではある。

また、おまけの実験で確認できたように、レギュレータを使わなくとも、LとCでノイズを充分に除去できるのかもしれない。発熱の問題も生じなくて良いかも。ただし、出力電流が一定の場合しか確認していない(電流が変動した場合にどうなるか未確認)。

それから、12Vのアダプタを使った場合に、出力側にノイズが漏れ出してくるのが良くわからない。レギュレータの発熱に伴う特性悪化かと思ったが、そうするとおまけの実験と矛盾があるように思う。手前側のLCだけでノイズが落ちているのであれば、レギュレータにノイズは行かないので漏れようもないはず。何度か9Vと12Vのアダプタを変えて確認してみたが、結果は変らなかった。いずれにしても、漏れ出してくるノイズは入力に含まれるノイズよも非常に小さくなっているのは間違いない(上の測定波形はCh1とCh2のスケールが10倍異なる)。

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