オペアンプ一発ヘッドフォンアンプの続き。これまでのところでは、単電源動作と両電源動作を比べると、電源からのノイズ混入やポップ音に関して、両電源動作の方が良いことがわかった。
今回は、オペアンプICによってポップ音に違いがあるかの実験。オペアンプによる音質の話しはあちこちで見かけるが、ポップ音の違いについての話はあまりないんじゃなかろうか?検索したけど見つからなかったし。
実験回路
テストに使う回路は、これまでの実験でポップ音が小さかった両電源タイプ。前のものと同じだけど、再掲。抵抗などの回路定数はすべてオペアンプでこのまま。
電源は約11Vのパッテリ(18650 x 3)。
負荷は、実際に音も確認したかったので、イヤフォンを接続した状態で測定。入力は何もつながない(オープン)。
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結果
電源をオン・オフさせたときの出力波形を観測。スイッチ付きの可変抵抗を使っているので、それをオンしてすぐにオフにする。
手持ちのオペアンプを見ていく。メーカ別に整理はしておくが、順不同(試した順)。
測定のたびに波形は異なるが、何度かやってみて「だいたいこんな感じ」という代表的なもの(なので、これよりも小さいことも大きいこともある)。
JRC(日清紡)
NJM5532DD
電源オン時にはわずかに波形が変化する程度(縦軸は100mV/div)。オフ時には±70mV程度。
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NJM2114DD
縦軸50mV/div。NJM5532DDよりは大きい。オフ時は+170mV、-70mV程度。
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NJM2068DD
非常に小さい。縦軸20mV/div。オフ時はプラス側だけで15mV程度。
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NJM2068D
上のNJM2068DDはローノイズ選別品。こちらは一般品。ポップ音に感しては、こちらのほうがさらに小さめ。
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NJM8080G
これはSOP品なのでDIP変換の下駄を履かせて装着。ポップ音は極めて小さいが、出力にオフセットが(他のものよりも)出ているようだ。
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NJM4558D
オン時、オフ時とも、ポップ音はほぼない。
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NJM4580DD
オフ時のポップ音がやや大きめ。+30mV、-10mV程度。NMJ2114DDやNJM5532DDよりは小さい。
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前回の実験で使ったのもNJM4580DD。それとは波形が異なるが、前回は負荷が22Ωの抵抗で、今回はイヤフォンのため(だと思う)。実際に耳にするのはこちらということになる。
ナショナルセミコンダクタ
LM4562
かなり昔に買ったTIに買収されるよりも前のもの。
オン時は非常に小さい(縦軸20mV/div)。オフ時はプラス側だけ20mV程度。
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バーブラウン
OPA2314PA
これもTIに買収されるよりも前のもの。
オフ時のポップ音がやや大きめ。+55mV程度。
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フェアチャイルド
LM358N
ポップ音は非常に小さいが、他のオペアンプと比べて逆方向に振っているのが特徴。なお、LM358の測定に関しては、回路にちょっとだけ手を加えたのでその影響かもしれない(確証なし)。回路変更についてはこちらの記事。
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HTC
LM358N
フェアチャイルド版と同傾向。ポップ音のレベルはこちらのほうがやや小さい。回路変更についてはフェアチャイルド版と同じ。
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アナログデバイセズ
AD8532
これはSOPパッケージなので、DIP変換の下駄経由。また、電源電圧が最大6Vのデバイスなので、5Vを供給(スイッチングACアダプタ)。
ポップ音は大きくはないけど、マイナス側に割と大きくオフセットしている。
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なお、このオペアンプは出力カップリングコンデンサを入れないと音が歪んでしまった(聞けたものじゃないほどひどく)。
ということで、出力カップリングコンデンサ220μFを入れた状態でも測定。コンデサを入れると、案の定、オン時に大きなポップ音が生じる(なんで?)。プラス側だけ+80mV程度。オフ時はマイナス側に15mVほど振れる。
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OP07
これは1回路品なので、二個を一つのDIP8に変換するアダプタを経由。
かなり特徴的。オン時はものすごく短時間だけど+50mVくらいまで振る。オフ時は発振したかのようにピューッという音が出る。
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AD711JN
これも1回路品なので、ニコイチ変換経由。オフ時に+50mVくらいまで振る。他のものと比べて振っている時間が長い。
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まとめ
この回路(両電源動作)では、全体的に見てオン時はポップ音は小さく、オフ時はそれよりも大きい。
ダントツに小さいのはNJM4558DD。他に小さいのは、NJM2068D、NJM2068DD、NJM8080G、LM4562あたり。逆に大きめなのがNJM5532DD、NJM2114DD。
なお、この結果はあくまで測定したもの。個体によって違いはあるかもしれない。また、負荷(ヘッドフォン)によっても変ると思う。
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