オペアンプでヘッドフォンアンプを作った場合、両電源と単電源とで音に影響があるのか前々から気になっていた。ここで想定している「両電源」は、実際には単電源で中点を作って仮想的にGNDとする方式なので、ちゃんとした両電源ではないけど。
結論から言うと、測定すれば違いはあるが、私の耳では区別がつかなかった。ただし、電源からのノイズの影響はずいぶんと違った。
回路
やってみるのは、オペアンプを一つ使った非反転増幅回路。使用するオペアンプはNJM4580DD。
単電源動作
信号入力端子にバイアスを掛けて正電圧側で動作させる。
両電源動動作
こちらは、抵抗分圧で電源電圧の中点を作って、これをGNDとする。
教科書的にはR13(R14)はない。しかし、実際にはこれがないとオフセットがかかって出力電圧がジワーッと動いていき、しばらくすると音が出なくなった。CMoyヘッドフォンアンプがこの形式(CMoyではFET入力のオペアンプを使うのでこの抵抗はもっと大きな値になっている)。
折衷方式(秋月方式)
秋月電子のヘッドフォンアンプキットAE-KIT45-HPAは折衷案とでも言うような方式。便宜的に秋月方式と呼ぶことにする。
オペアンプ自体は仮想GNDで動かしているけれど、入出力はGND基準にしている。そのため、出力側にカップリングコンデンサが入っている。
測定
上の三つの方式を聴き比べたが、最初に書いたとおり、私の耳では区別がつかなかった。そこで、測定機を使って測定。Analog Discovery 2で周波数特性やTHD+Nなどを測ってみる。
負荷は、ヘッドフォンの代りに22Ωの抵抗。電源はバッテリ(18650 x 3の約11V)。また、実際の回路図はこれ。
回路図の上側が単電源動作のもの。下側が両電源動作と秋月方式の両用で、ジャンパで切替え。その他、別の実験用に少し別の部品も載っている(ジャンパで切離し)。
単電源動作
グラフ部分は二つに分かれており、上が周波数特性(実線)とTHD+N(破線)、下が位相特性。また、オレンジが入力信号で、青が出力信号。
入力信号の振幅は100mV(±100mVpp)の設定で、ボリュームは最大に設定。
周波数特性で50Hzより下が下がっているのはカップリングコンデンサの影響だろう。想定通り。それより上は100kHz位までは概ねフラット。
両電源動作
単電源動作の場合とほぼ同じ。細かく見ると周波数の測定下限あたりのレベルはこちらのほうが高い(良い)。これは、出力のカップリングコンデンサがないためだろう(入力側のコンデンサの影響だけ)。とはいえ、5Hzあたりで-4dBと-2dBくらいの違いなので、聞いてわかるものじゃないと思う。
秋月方式
これも変わらないだろうと思っていたのだけど、測定結果では低域の下がり方がだいぶ大きい。これは耳の良い人なら気づきそう。ただし、秋月のキットでは入力側も出力側もカップリングコンデンサの値はもっと大きいので、これほどの特性の悪化はないのだろうと思う。それにしても、この違いはなぜだろう?
【追記】これについては、単電源動作時にはCの影響で低域が持ち上がっているためだそうだ。
電源からのノイズ
入力信号(音楽)を聞く限りにおいては、ほぼ差は感じなかったことは上に書いたとおり。しかし、電源からのノイズの混入に関してはかなり違った。
スイッチング方式のACアダプタを使うと、ハム音とスイッチングに起因すると思われるノイズが聞こえる。これが一番大きいのは単電源方式。秋月方式ではほとんど聞こえない。両電源動作はそれらの中間。
スイッチング式の安定化電源(アルインコのDM-330MV)を使った場合は、秋月方式、両電源動作ともノイズはほぼ聞こえない。単電源動作では聞こえる。
どうやら、電源からのノイズに関しては、両電源動作のほうが有利なようだ(秋月方式がもっとも良い結果)。
なお、これはあくまで今回の実験環境においての話。なぜそうなのかがわかっていないので、実験環境次第では変る可能性がある。また、バッテリ動作なら、当然、このような違い(問題)はない。
【追加実験】ポップ音には大きな違いがある。
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