正弦波に割と近い波形が得られるシンプルなTwin-T発振回路に関する実験。
背景
これまで、「モールス練習機TTCWシリーズ」などで使ってきた経験上、以下のことがわかっている。
- 電圧の変動で発振周波数が変化する
- 負荷抵抗の変動でも周波数が変化する
TTCWシリーズのバージョンアップの歴史は、これらの対策の結果でもある(それだけじゃないけど)。
最近、ふと、「もうちょっと特性をよくできないか(より正弦波に近づけないか)」と思いはじめた。そこで、次の二点を調べてみる。
- コンデンサはフィルムが良いのか?
- LPFを入れてみる
Twin-T発振器の自作例を調べてみると、発振回路のコンデンサにはフィルムコンデンサを使っているものが多い。なんとなくそういうものだろうなとも思う。しかし、「フィルムコンじゃなきゃダメなの?」という気もする。実際、セラミックコンデンサで組んだ例も見受けられる。ただ、なぜセラミックコンデンサにしたのかという説明は見つけられなかった。そこで、フィルムコンデンサとセラミックコンデンサで違いがあるかを見てみる。
LPFの挿入は、倍音成分を減衰させることでどのくらい特性を改善できるかという話。
回路
TTCW06を使って実験しようかと思ったのだけど、基板上にギチギチに部品を詰め込んでいるのでこれをいじるのはなかなか大変。
そこで、これと同じ回路を別途、実験用に基板を起こす。
テストポイントをいくつか付けたことと、CRによるLPFを組み込んだ以外は、TTCW06と基本同じ。ただし、実験用なのでCやRはリード部品も使えるようにした(そのため基板面積はTTCW06の二倍になった)。
これを、PCBGOGOのレビュー用の基板として作った。実験基板には二つの実験回路を載せており、この実験用のものは基板面積の半分(100x50mm)。下の写真がその回路(実験後の様子)。
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実験
セラミックコンデンサ VS フィルムコンデンサ
まずは、Twin-T回路のコンデンサによる違いの確認。
上の回路で、R111とC114はLPF。今の段階では、R111はショート、C114は未実装として、LPFはなしの状態で実験。Twin-T発振器の出力のTP101(TT)のポイントで観測する。
最初に(チップ)セラミックコンデンサで試す。まずは、発振することの確認。
FFTで倍音の状態をチェック。
第2倍音との差は約24dB。6次くらいまでは見える(13kHzくらいの山は多分別の要因のノイズ)。
フィルムコンデンサに載せ替える。
第2倍音との差は約26dB。この数字で見ればフィルムコンデンサのほうが良いが、わずかの差だとも言える。聴感上、違いを感じるかと言えば、わからない。
LPFの挿入
R111を1kΩ、C114を0.1μFとする。これでカットオフ周波数は約1.6kHz。
ところが、実際に動かしてみると、発振周波数が一気に下がった。LPFの接続によってTwin-T発振回路の負荷が変り、その影響を受けたのだろう。予想外だったけど、負荷抵抗によって発振周波数が影響を受けることがわかっていたので、予想すべきだった。
そこで、Twin-T発振回路の出力にLPFを入れるのはやめて(R111をショート、C114は実装せず)、バッファアンプの出力(Q104のコレクタとTP104の間)にLPFを入れることにした。
まず、LPFなしの状態(バッファアンプ出力)。
そう言えば、このFFTアナライザにはピークホールド機能があったことを思い出したので、それを使った(黄の線)。基音と第2倍音は20.5dB。
続いて、LPF(1kΩ+0.1μF)を挿入したもの。
基音と第2倍音は27.7dB(カーソルの移動が難しいのでちょっとずれているっぽい。実際はもうちょっと良い値のよう)。だいぶ改善されている。聴感上も違いを感じる(より丸く聞こえる)。この時点ではTwin-T発振回路のコンデンサはフィルムのまま。
試しに、発振回路のコンデンサをセラミックに戻してみる。
第5次の倍音まで、大体同じように特性を改善できている。強いて言えば、フィルムコンデンサのほうが第2倍音のレベルが低いか?測定誤差か?
なお、LPFを入れることで基音のレベルも下がっている。LPFなしが約-36dB、ありが約-42dB。CRの定数を変えて通過損を減らしたほうが良さそう(220Ω+0.47μF?2.2kΩ+0.047μF?どっち?)。または、レベルの低下分をバッファアンプか、最終的なオーディオアンプのゲインを上げて補うか?
まとめ
- 発振回路のコンデンサはフィルムでもセラミックでも大きな違いはなさそう。フィルムのほうがいいのかもしれないけど、実装スペース優先ならチップの積層セラミックで良いと思う。
- CRの簡単なLPFでも結構効く。
- Twin-T発振回路に直接LPFを接続すると発振周波数が下がる。今回の実験ではバッファアンプを通したあとにLFPを入れた。
- LPFの通過損に関して検討が必要(CRの定数を見直す、またはアンプのゲインを上げる)。
- 発振回路のコンデンサがフィルムかセラミックかという違いよりも、LPFの有無のほうが影響(効果)が遥かに大きい。
- LPFを入れると倍音が減るので、聴感上はおとなしくなる。
ついでに、以前実験した関連の話。
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