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Banggoodがレビュー用としてNanoVNA-F V2を送ってくれたので試してみる。
要約
最初にざっくりまとめるとこんな感じ。
- 上限周波数が3GHz(下限は10kHz)
- 基本的な使い方はNanoVNAと同じ
- 画面が大きく、解像度も高くて見やすい
- ケースは金属(アルミ合金)
- バッテリが巨大(モバイルバッテリとしても使える)
以下、詳細。
NanoVNA-F V2とは?
まず、NanoVNA-F V2とは何者かについて。
NanoVNAが世の中で話題になってきた数年前、中国のSYSJOINTという企業が独自拡張して市場に投入したのがNanoVNA-F。これは金属筐体で大きなディスプレイを搭載しているなどの特徴を持っており、「高級版NanoVNA」といった感じであった。当時はまだNanoVNA-H4は存在しておらず、ディスプレイが大きなことや大容量バッテリはとても魅力的だった。
NanoVNAに刺激を受けて、まったく別のプロジェクトとしてより高い周波数で使用できるS-A-A-2が開発された。NanoVNAは上限周波数が900MHzだったのに対してS-A-A-2は3GHz。
NanoVNA-FにS-A-A-2の成果を取り込んだものが、このNanoVNA-F V2。LiteVNAはS-A-A-2のプロジェクトと揉めているようだけど、NanoVNA-F V2はS-A-A-2との間にそうしたトラブルはなく関係は良好な様子。参考までに、S-A-A-2のV2_2とNanoVNA-F V2の仕様をまとめておく
S-A-A-2 V2_2 | NanoVNA-F V2 | |
---|---|---|
周波数範囲 | 50kHz – 3GHz | 50kHz – 3GHz |
S21 ダイナミックレンジ | 70dB (< 1.5GHz) 60dB (< 3GHz) | 70dB (< 1.5GHz) 60dB (< 3GHz) |
S11ノイズフロア | -50dB (< 1.5GHz) -40dB (< 3GHz) | -50dB (< 1.5GHz) -40dB (< 3GHz) |
スキャンポイント | 最大201 | 最大101 |
ディスプレイサイズ | 2.8インチ | 4.3インチ ISP TFT 800×480 |
バッテリ | (実装による) | 5000mAh |
このように、測定スペックは同じで、ディスプレイが大きいことと大容量バッテリがNanoVNA-F V2の特徴のように見える。なお、NanoVNA-F V2はファームウェアは新しいものが随時リリースされており、現時点(2022年6月26日)では、周波数下限が10kHzに下がり、スキャンポイントは最大301に拡張されている(S-A-A-2のファームウェアは更新が止まっている)。
ディスプレイについては、NanoVNA-H4を上回る。NanoVNA-H4は3.95インチで解像度は320×480であるに対して、NanoVNA-F V2はもう少し大きくて4.3インチ。しかも、800×480と解像度も高い。
NanoVNA-F V2の公式ページはここ。マニュアルや最新ファームウェアなども置いてある。
外観と内部
外観
箱は無地のダンボール。内容物は本体一式とUSBケーブル(Type-C)とスタイラス付きストラップ。
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本体と付属品一式はプラケースに収まっている。USBケーブルはここには入らない。ストラップは付けるところがない…。
NanoVNA-H4と外観比較。赤キャップがNanoVNA-F V2、黄キャップがNanoVNA-H4。
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ディスプレイの大きさは比べるとやはり違う。単体で見ると気づかないかも。筐体サイズはコネクタの飛び出しの分だけNanoVNA-F V2の方が大きい感じ。厚みもやや厚い。
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マーカ等の操作はレバースイッチではなく、三つのタクトスイッチ(S-A-A-2と同じ)。
真ん中のUSBコネクタは何かと思ったら、ここから電源取り出せるようになっていた。つまり、モバイルバッテリとして使用可能というわけ。電源スイッチと連動している(スイッチを切ったら外部への電源供給も止まる)。
内部
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液晶パネルはノングレア。開けたついでに保護シートを貼った(もちろん、ノングレアタイプを)。
シールドに気を使ってることがわかる。やはり、バッテリは大きい。液晶も大きいし、筐体は金属だしで、持った感じはずっしりしている。
使用感
本体
電源を入れてまず驚いたのは、音が出ること。電源投入時に「ピッ!」と鳴る。他にはキャリブレーションの実行時にも鳴る。
操作方法はNanoVNAなどと同じ。下は、アンテナ等価回路(LCR共振回路)を測定してみた様子。ISP液晶のためか、視認性はいい感じ。
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特徴的なのは各マーカの読取り値が表示されること。他の機種ではアクティブなマーカの値だけが一番上に表示されるが、NanoVNA-F V2ではそれに加えて各マーカの値も表示される。ただし、四つのグラフの内、二つだけ。その二つはどのように指定するのかはわからなかった。
マーカを動かすスイッチがNanoVNAなどとは逆。真ん中ボタンの左を押すとマーカは右に、右を押すと左に動く。スイッチ位置が上のものを押すと周波数が上に動くという意図なのだろうけど、NanoVNAに慣れていると逆なので間違いがち(NanoVNAはレバースイッチを左に倒すと左に、右に倒すと右に動く)。
SMAコネクタのそばはNanoVNA-H4のような邪魔な出っ張りがないので、このネクタの脱着はしやすい。
下は1200MHz 2/3λヘンテナを測定した様子。
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この状態だと下にスイッチがあるので上手く立たない。L型の変換コネクタが付属しているのでそれを使えばよかったと今になって思った。
Sパラメータファイル(タッチストーンファイル)
NanoVNA-F V2では本体でSパラメータをファイルに保存できる。メニューの「STRAGE」から。
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S1P、S2Pのボタンを押すと本体内に保存される(ブザーも鳴る)。LISTで保存したもの一覧を表示。
PCにNanoVNA-F V2をUSBで接続し、真ん中ボタンを押しながら電源を入れるとUSBドライブとして認識される。
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fileフォルダの中に保存したファイルがある。ファイルの消去はNanoVNA-F V2本体ではできないようなので、PCで行うのだろう。
しかし、これができるのなら、画面のキャプチャもできそうなものだけど、そういう機能は見あたらない。
【追記】
PCソフト(NanoVNASaver)
公式サイトにSYSJOINTが手を加えたNanoVNASaverが置いてあった。ただ、どのような変更が加えられているのかは不明。下は、それで測定したもの。
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使ってみてもオリジナル版のNanoVNASaverと何が違うのかわからない。普通に使える。液晶の解像度が高いのでキャプチャが上手くいくかちょっと気になったが、問題ない。解像度が高い分、やはりきれい。
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SYSJOINT社版なので当然か。念のためオリジナル版でも試したら、こちらも問題なかった。なお、SYSJOINT社版はバージョンがちょっと古い。オリジナル版の方が新しいのでSYSJOINT社による変更をマージしているのかもしれない(不明)。
NanoVNA-Appでは、NanoVNA-F V2は残念ながら使えなかった。
ファームウェアアップデート
NanoVNA-F V2のファームウェアは随時更新されているようで、公式サイトで配布されている。手元のものを確認したところ、0.4.0。
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公式サイトの最新版は 0.5.0。
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ZIPを展開するとupdate.binというファイルがある。
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NanoVNA-F V2をUSBでPCにつないで真ん中ボタンを押しながら起動。USBドライブとして見えるので、そこにこのupdate.binをコピーする。あとは、NanoVNA-F V2の電源を入れ直すだけ。これで、自動的にファームウェアが更新される。ものすごく簡単。
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無事、0.5.0になった。Build timeがJune 24 2022なので、つい最近リリースされたようだ。
まとめ
主にNanoVNA-H4との比較のような形でまとめておく。
- NanoVNA-F V2の方が良い点
- 周波数上限が3GHz
- 画面が大きくて見やすい(解像度も高い)
- バッテリも巨大
- ケースが金属(アルミ合金)
- 画面上に各マーカの情報が表示される
- 本体でタッチストーンファイルを保存できる
- ファームウェアのアップデートが極めて簡単
- 余計な出っ張りがないのでコネクタの付け外しが楽
- 付属変換コネクタが多い
- NanoVNA-F V2の方が劣る点
- 重い(厚さも少々厚い)
- ストラップが付けられない
- キャリブレーション操作でいちいちブザーが鳴ってやかましい(わかりやすいともいう…)
- 機能不足(NanoVNA-H4は最近のファームウェアでかなり強化された)
- グラフが少ない(|Z|、L、Cなど)
- マーカが4つしかない(H4は8つ)
- NanoVNA-Appで使えない
ざっとこんな感じ。不満点の多くは、NanoVNA-H4の最近(と言っても半年くらい前だけど)の強化ポイント(グラフ追加、マーカ増加)がNanoVNA-F V2にはないこと。それと、PCソフトのNanoVNA-Appで使えないことも残念。この他に、本体での画面キャプチャ機能もあると嬉しいのだけど。NanoVNA-F V2のファームウェアのアップデートに期待したい。ついでに、スイッチの逆転機能も欲しいかも。
H4とF V2とはそもそも扱える周波数の上限が違うので直接比べる訳にはいかない。したがって、上の不満点は操作系の話。H4はきちんと見られるのは900MHzまで。1200MHzあたりまで一応見られるという感じ。F V2は3GHzまでしっかり見られる(と思う)。そういう意味では、S-A-A-2のクローンと比べるべきだろう。そちらとの比較だとF V2の圧勝という印象。
クーポン
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コメント
NanoVNA-F V2の世界へようこそ。
NanoVNA-F V2の記事がほとんど見つからないので、書いて頂くととても嬉しい・・・
各マーカの読取り値はトレース0とトレース1のみですね。
アンテナ調整がメインなので個人的には最低SWR、R、Z、REACの4つが欲しいところです。
Zのグラフが加わるよう、今後のVerUPに期待です。
なるほど、マーカ情報にはトレース0と1だけが表示されるんですね。
NanoVNAの今のファームウェアはかなり強化されていますので、それと比べると残念ながら見劣りしてしまいます。早くキャッチアップしてほしいですね。
いつも参考にさせて頂いております。
記事中のSYSJOINT社のHPの構成が変更されているため、記事中のリンクがリンク切れになっているため、修正して頂けると皆さんも困らないかと思います。
https://www.sysjoint.com/en/ ⇒ https://www.sysjoint.co…
F V2の公式ページのリンクも同様です。
知人の対応のためファームウェアの確認をしていたら「NanoVNA-F V3」なるものが出てきました。最高周波数が6GHzに拡張(最低は1MHzに後退)されたもののようですね。H4で事足りているので購入予定はありませんが。
また、-F用にストラップを付けるため、遊んでいるUSBコネクタにジャンクケーブルを加工してストラップホールを付けてみました。そのうちblogのネタにします。
情報、ありがとうございます。リンク先を修正しました。
NanoVNA-F V3は良さそうなんですけど、残念なことにmicroSDに対応していないんですよね。NanoVNA-H4やLiteVNAだとスクリーンショットやs1p、キャリブレーションデータなどをmicroSDに保存できて便利です。NanoVNA-F V2ではそこが不満だったんですが、V3でも同じで残念って感じです。