バランのSWR測定で、フロートバランでは同軸ケーブルを使ったものが良い結果だった。
これから類推するに、1:1の強制バランでも同軸ケーブルを使ってみたらどうだろう?
と、思って、トロ活を開いたら、やはりそれに関しての言及があった。
「12.10 同軸巻線について(p.496)」によれば、同軸を使うと特性インピーダンスの面からは非常に楽になるとのこと。しかし、同軸ケーブル自体の許容通過電力を検討する必要が出てくるようだ。少々引用。
FT240サイズのコアに5D-2Vを10回巻くと1m弱の長さになりますが,30MHzで1kWを通すと発熱は10.5Wになって、FT204サイズのコアの放熱能力(許容発熱)4.56Wの2倍くらいになります.コアの発熱を考慮して,4.56Wの半分の2.3Wを巻線に許すとすると,同軸ケーブルに通せる電力は250Wくらいになってしまいます.
この文章を式にするとこうなる。
$$実用電力 \simeq 1kW \times \frac{コア許容発熱}{30MHz\ 1kW時の発熱\ \ \ \ } \times \frac{1}{2}$$
この他、FT240と3D-2V、FT140と2.5D-2Vの試算の記述もあるので、表にまとめてみる。
コアサイズ | 同軸 ケーブル |
巻数 | ケーブル長 | 30MHz 1kW時の 発熱 |
コア 許容発熱 |
実用電力 |
---|---|---|---|---|---|---|
FT240 | 5D-2V | 10 | 1m弱 | 10.5 W | 4.56 W | 250 W |
FT240 | 3D-2V | 10 | 1m弱 | 17.6 W | 4.56 W | 130 W |
FT140 | 2.5D-2V | 10 | 約50cm | 19.6 * 0.5 = 9.8 W | 2.07 W | 100 W |
FT114 | 1.5D-2V | 10 | 約35cm | 35.1 * 0.35 = 12.3 W | 1.12 W | 45 W |
FT114と1.5D-2Vは、私が試算したもの。この結果では、45Wまでしか使えないことになる。
とは言え、これは10回巻きを前提としたもの。1:1の強制バランでは、伝送路インピーダンスの5倍以上が設計要点(「9.2 バランの実際」p.367)なので、FT114-43で10回巻きだと50Ωの5倍の250Ωが確保できる下限周波数は0.78MHz。例えば、3.5MHzで250Ωは5回巻きで確保できる。ということで、巻数を変えて試算してみる。
◆FT114-43、1.5D-2V
巻数 | ケーブル長 | 30MHz 1kW時の 発熱 |
コア 許容発熱 |
実用電力 | 下限周波数 |
---|---|---|---|---|---|
10 | 約35cm | 35.1 * 0.35 = 12.3 W | 1.12 W | 45 W | 0.78 MHz |
9 | 約33cm | 35.1 * 0.33 = 11.6 W | 1.12 W | 48 W | 0.96 MHz |
8 | 約30cm | 35.1 * 0.30 = 10.5 W | 1.12 W | 53 W | 1.22 MHz |
7 | 約27cm | 35.1 * 0.27 = 9.5 W | 1.12 W | 59 W | 1.59 MHz |
6 | 約24cm | 35.1 * 0.24 = 8.4 W | 1.12 W | 66 W | 2.17 MHz |
5 | 約21cm | 35.1 * 0.21 = 7.4 W | 1.12 W | 76 W | 3.12 MHz |
ということで、50WならFT114-43に1.5D-2Vを7回巻きで1.8MHz以上で使えそう。
ところで、FT114-43は内径が19mm。なので、内周は、\(19\times 3.14 = 59.6\)mm。また、2.5D-2Vの直径は4.3mm。仮に、三本目として1mmのウレタン線を添わせたとすると5.3mm(実際には、ウレタン線は同軸ケーブルを巻いた隙間に収まりそうだけど)。59.6mmの内周があるのだから、\(59.6 \div 5.3 = 11.2\)だから、11回巻ける。1.5D-2Vを使う必要はなさそう。3D-2Vだと5.5mmなので、1mmのウレタン線とセットで6.5mm。\(59.6 \div 6.5 = 9.1\)、つまり、7回巻きなら2.5D-2Vでも3D-2Vでも大丈夫ってことか。
◆FT114-43
同軸ケーブル | 巻数 | ケーブル長 | 30MHz 1kW時の 発熱 |
コア 許容発熱 |
実用電力 | 下限周波数 |
---|---|---|---|---|---|---|
2.5D-2V | 8 | 約30cm | 19.6 * 0.30 = 5.9 W | 1.12 W | 95 W | 1.22 MHz |
2.5D-2V | 7 | 約27cm | 19.6 * 0.27 = 5.3 W | 1.12 W | 105 W | 1.59 MHz |
2.5D-2V | 6 | 約24cm | 19.6 * 0.24 = 4.7 W | 1.12 W | 119 W | 2.17 MHz |
3D-2V | 8 | 約30cm | 17.6 * 0.30 = 5.3 W | 1.12 W | 105 W | 1.22 MHz |
3D-2V | 7 | 約27cm | 17.6 * 0.27 = 4.8 W | 1.12 W | 116 W | 1.59 MHz |
3D-2V | 6 | 約24cm | 17.6 * 0.24 = 4.2 W | 1.12 W | 133 W | 2.17 MHz |
FT114-43に2.5D-2Vを7回巻が100Wまでが落とし所?3D-2Vでも計算上は大丈夫だけど、太いので小さなコアには巻きにくそう。
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