先日、ある方とQSOした際に、NanoVNAで同軸ケーブルの短縮率(速度係数、Velocity Factor)を測る話しになった。そう言えば、まだやっていなかったので、この機会にトライしてみる。
原理
- 開放端の同軸ケーブルはλ/4の長さ(電気長)でインピーダンスがゼロ
- 短絡端ではλ/2の長さでインピーダンスがゼロ
同軸ケーブルをアンテナアナライザに接続して測定すれば、そのケーブルの電気長が求められる。これと実際に測った機械的な長さとの比で短縮率が求められる。
【参考サイト】
測定
では、早速測ってみる。対象はおなじみの秋月のRG-58C/U 10m。TDR分析でも使ったもの。
開放端
インピーダンスはNanoVNAで測れる。
インピーダンスが0Ω(最小)のポイントは、4.78MHz(マーカ1)。インピーダンス最大のポイントがλ/2で、9.69MHz。その後、λ/4ごとに最小、最大を繰り返す。ちなみに、インピーダンスは理想デバイスならゼロと無限大だけど、実デバイスではそうなるとは限らない。
ついでに、OSA103 miniでも測定。
インピーダンスが最小のポイントは、4.83MHz。NanoVNAとはちょっと違う結果。
この際なので、FA-VA5でも測定。
インピーダンスが最小のポイントは、4.77MHz。NanoVNAとほぼ一緒の結果。
短絡端
まずは、NanoVNA。
開放端の場合とはインピーダンスが最小と無限大が逆になるだけで、周波数は同じ。最小のポイントは9.69MHz(マーカ2)。
OSA103 mini。
9.64MHz。NanoVNAでの結果と大体同じ。
FA-VA5。
9.64MHz。OSA103 miniでの結果と同じ。
短縮率を計算
まず、同軸ケーブルの実際の長さ。3.5mのコンベックスを使って手動で測ったので誤差はあると思うが、10.18mだった(BNCコネクタを含む両端)。
電気長の計算の計算に、どの測定結果を採用しようかと考えたが、この際だから全部計算してみる。
開放端でのNanoVNAによる測定結果が4.78MHz。
$$電気長 = \frac{300}{4.78} \div 4 = 15.69[m]$$
$$短縮率 = \frac{10.18}{15.69} = 0.649$$
以下、同様に計算したもの。
- 開放端
NanoVNA | OSA103 mini | FA-VA5 | |
---|---|---|---|
電気長[m] | 15.69 | 15.52 | 15.72 |
短縮率 | 0.649 | 0.656 | 0.648 |
- 短絡端
NanoVNA | OSA103 mini | FA-VA5 | |
---|---|---|---|
電気長[m] | 15.48 | 15.56 | 15.56 |
短縮率 | 0.658 | 0.654 | 0.654 |
なかなか微妙なところ。短絡端での測定の方が「三者の意見がだいたい一致してる」ようなので、こちらを採用すれば、0.655というところだろうか?
ちなみに、短縮率を0.66として、TDRで測定した長さがこちら。
- 開放端
- 短絡端
短絡端では、実際の長さと一致している(実際の長さの測定誤差はあろうが)。短縮率は計測結果から求めたものは少し小さな値(0.655)だったが、この程度は誤差のうちか?
オマケ ~ 50Ωを測ってみる
試しに、この同軸ケーブルを50Ωで終端した場合も測定してみた。
マーカ1がリアクタンスがゼロのポイント。マーカ2がインピーダンスが50Ωのポイント。マーカ3が電気長λ/2のポイント(短絡端で測定した周波数)。「SWRの測定には、電気長λ/2(の整数倍)の同軸ケーブルを使え」と言われる理由がわかる。逆に、電気長λ/4だと誤差が大きくなる。とは言え、どのくらい気にするか(精度を求めるか)っていう問題のようにも思える。また、ここで使ったNanoVNAなどのVNAを用いて測定するなら、同軸ケーブルの先(アンテナ直下)でキャリブレーションを行ってから測定するという手もある。
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