チップ部品が見えないのは
「老眼でチップ部品は見えなく…」などという声をよく聞くけど、チップ部品が見えないのは老眼のせいじゃない。老眼のせいもあるだろうけれど、それよりも、そもそもチップ部品が小さいから。
例えば、ミジンコの観察を肉眼でやる人がいるだろうか?おそらく、ルーペ(拡大鏡)や顕微鏡を使うはず。なのに、なぜチップ部品は肉眼で頑張ろうとするのだろう?素直にルーペなどを使うべき。ちなみに、ミジンコのサイズは、ざっくり1~2mm程度らしい。もちろん種類による。1mm以下のものもいれば、3mmを越えるものもいるが、それは本題ではないので置いておく。
チップ部品だと、手ハンダでもそんなに難しくないのが2012サイズ。2.0×1.2mmでちょうどミジンコ程度の大きさ。ちなみに、米(コシヒカリ)の大きさが大体5×3mm程度のようだ。チップ部品(2012)はそれよりずっと小さいのだから肉眼で見ようというのがそもそも無理。
「老眼だから」と諦めるのではなく、それにあった道具を使えばいい。と言うか、それが必要だという話。
以下、私が使っているものを中心にいくつか。
拡大鏡スタンド
卓上型
基板も固定できて便利ではあるけれど、ルーペの拡大率があまり大きくない。チップ部品のハンダ付けにはやや不満。ハンダ付け後に別のルーペで拡大確認が必要。
より倍率の高いルーペが付いたものもあるようだ。
ルーペ付きライトスタンド
こういうのを使ってみたいとは思うが、残念ながら専用の作業机が確保できていないため、使ったことがない。Amazonのレビューを見る限りは良さそう。
ルーペ
アイルーペ
時計屋さんが眼窩に挟んで使っている拡大鏡。「時計見」、「キズミ」とも言われる。
実際にやってみると、眼窩に挟むのは結構難しい。しかし、非常によく見える。結局の所、手で持って使うことが多い。
対象物にかなり近づかないと焦点が合わないので、これを付けてハンダ付けするのは無理だと思う(危ない)。ハンダ付けのあとの仕上がり状況を見るのに良い。
ハンダ付け後に見るのなら、デジカメやスマートフォンで撮影すればいいじゃないかと思うかもしれないけど、ルーペだとその場で角度を変えて確認できる点が大きなアドバンテージ。
携帯ルーペ
正確な呼び名がわからないので、便宜上の名前ということで。
かなり昔に、キャンペーンか何かでもらったもの。
おそらくレコード針用だと思う。そのため、倍率が高すぎて使いづらい(対象物に接触するくらい近づかないと焦点が合わない)。
買うならもっと倍率が低いものの方が良いと思う。
ちょうど、このジャンクのコンパクトカメラから取り出したレンズがいい具合に良く見える。
メガネ型ルーペ
いわゆる「ハズキルーペ」の類。
こういうものと老眼鏡とがどう違うのか、前々から疑問だった。それで、こないだメガネ屋さんに行ったついでに聞いてみたら「原理的には同じ」とのこと。やっぱりそうだよな、どのみち凸レンズなんだから。1.6倍のもので、老眼鏡で言う「+2.25」に相当するらしい。うろ覚えなので違っているかもしれないけれど、ともかく、度数がやや高めの出来合の老眼鏡と同じ。
一方、眼鏡屋さんで作ってもらう老眼鏡は、「その人に合わせて作る」のが大きなポイント。左右の度の違い、乱視の矯正、瞳の間隔など、これらを一人ひとりに合わせている。ここが出来合いのものとの違い。
では、こうしたメガネ型ルーペは何が特長なのか言うと、「眼鏡の上から掛けられること」だそうだ。近視の人が小さいものをハッキリ見たいとき、また、老眼の人もやはり小さいものをよりハッキリ見たいときに、普段使っている眼鏡の上に掛けて使える。これがメリット。もちろん、視力のいい人が裸眼で使うことも可能。なので、チップ部品を扱うとか、ミジンコを観察するとか、そう言うときに大いに役立つ。
ただし、実際のところは「度の強い老眼鏡」と同じなので、焦点が合う距離の範囲(写真で言うところの「被写界深度」)が非常に狭い。読書のように対象物との距離が変らないのならいいけれど、ちょっと離れたところにおいた回路図を参照しながら手元でハンダ付けという作業は辛い。そう言う場合は、跳ね上げ式ルーペが便利かもしれない。
私が使っているのは、3Mの度付き保護めがね(+2.0D)。
基本は「保護メガネ」。下のごく一部に拡大鏡が付いている。慣れが必要だけど、跳ね上げる手間もなく、視線を移すだけで素通しと拡大鏡を切換えられるので便利。保護メガネなので、ハンダ付けだけのときだけでなく、電動ドリルを使うときにもピッタリで、結構気に入っている。詳細は別記事で。
ヘッドルーペ
oenbopo ルーペ LEDメガネ ヘッドルーペ 5レンズ交換 1.0倍1.5倍2.0倍2.5倍3.5倍 倍率角度調節 ゴムバンド ...
実に様々なタイプがあるが、今のところまだ使ったことがない。
顕微鏡
デジタル顕微鏡
顕微鏡とLCDモニタ一体になったもの。
デジタル顕微鏡 4.3インチ液晶 最大1000倍率 HD 360万画素 昇降スタンド式 LED搭載 デジタルマイクロスコー...
かなり大きく拡大できるし、静止画も動画も撮影できる。充電式なのでケーブルレスで使える。液晶の画質はイマイチ。
欠点は、モニタの角度が変えられないこと。かなり垂直よりの角度なので机の上にさらに作業台を乗せてその上で作業したくなる。詳細は別記事で。
今、改めてAmazonを見ると、パネルがもっと寝た(上向きになった)タイプもあるようだ。
デジタル顕微鏡 マイクロスコープ 最大1000倍率 1年保証 WIN7/10対応 720P画面 360万画素 日本語システム 4...
こちらの方が使いやすいかもしれない。本当は、ディスプレイの角度を変えられるといいのだけれど、値段が値段なので仕方ないか。
もう一つ注意点を上げると、奥行き(アームまでの距離)があまりないので、比較的小さな基板しか扱えない。
実体顕微鏡
デジタル顕微鏡の欠点は2Dなこと。本当は3Dで立体的に見えた方が作業しやすい。となると、実体顕微鏡。
ホーザン(HOZAN) 実体顕微鏡 倍率10/20切替式 基板、ハンダ付けに最適 クリップ2個 アイカップ2種付属 L-51
安価なデジタル顕微鏡に比べると少々値が張るが、作業性は格段に良いと思う。ただし、顔と基板との距離が近くなるのでハンダ付けの際のヒューム(煙)を吸い込まないように注意が必要。
かなり安価なものもある。
これらは、スマートフォンを取り付けるアダプタも付いているようで、面白いかもしれない。安すぎてちょっと不安な気もするが。
奥行きの問題は、デジタル顕微鏡と同じ。
まとめなど
結局の所、私はメガネ型ルーペ(3Mの度付き保護メガネ)を使ってハンダ付けし、その後でアイルーペか携帯ルーペでチェックするというスタイルが多い。そして、ときどきデジタル顕微鏡を使うこともあるという感じ。
老眼鏡は「近くに焦点が合わない」を矯正して近くに焦点が合うようにしてくれるもの。決して拡大鏡ではない。老眼であろうがなかろうが、小さいものは見えない。「老眼だから…」などと言っていないで、堂々とルーペを使いましょ。
それと、もう一つ、明るさもポイント。できるだけ明るくすると見え易い。
その他のハンダ付けに関する話はこちらで。
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