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概要・特徴
本機は前作SAAP01のバージョンアップ版です。
バージョンアップ版とは言っても、基本的なところは変っていません。
- 1W + 1WのシンプルなAB級アンプ(HT82V73A)
- 独立したヘッドフォンアンプ(AD8352)
- 4層基板を採用 – 電源とGNDに専用プレーンを割当て
- 電源用の電解コンデンサを多数搭載可能(前モデルよりも増加)← バージョンアップ
- 入力端子は3系統 – 背面(RCA)と前面(3.5mm x 2)← バージョンアップ
- チップ部品は実装済み
- カップリングコンデンサなどは好みのものを使用可能
- サイズは100×100×25 mm(突起物は含まず)
- 電源はDC5V(ACアダプタは1A以上のもを推奨)、ジャックは2.1/5.5mmセンタプラス
この他、アンプの増幅率を見直して、小さな入力でも大きな音を出せるように変更しました(当然ながら、入力が大きい場合はボリュームを上げすぎると音が割れます)。他にも色々細かい見直しを行っています(性能とは直接は関係のない部分で)。
出力は各ch 1W(ICの最大定格は1.5W)の小出力とはいえ、静かな屋内での使用なら充分な音量だと思います(スピーカの能率にも依存します)。個人的な感想ですが、解像度が高く、ぞれぞれの楽器の音がはっきり聞こえるように感じます。
アンプの電力と音量についてはこちらの記事を参考に。
使い方
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電源スイッチはボリュームと兼用です。3系統の入力はスライドスイッチで切り替えます。ヘッドフォンジャックにプラグを差し込むとスピーカからは音が出なくなります。
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スピーカ出力はBTLです。マイナス端子はGNDではありません。また、左右のマイナス端子も共通ではありません。マイナス端子をGNDにつないだり、左右のマイナス端子同士をつないだりしないでください。
スピーカ端子は、よくある下のようなものに合わせて、左右の端子の内側がマイナス、外側がプラスです。本機でも、本当はこういう端子を採用したかったのですが、スペースの都合で入らないため、ターミナルブロック(スクリューターミナル)にしました。
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ヘッドフォンのプラグを差し込むとスピーカの音は消えます。
電源は+5Vです。1A以上の出力のものを用意してください。電源プラグは2.1/5.5mmのごく一般的なものです(センタプラスです)。できるだけ品質の良い電源をおすすめします。前モデルで、電源を変えたら音質がずいぶん変ることを実感しました。
上の記事のリニア電源は比較的安価な方だとは思いますが、それでも結構な金額です。そこで、DC8~12Vから5Vを取り出すDC/DCコンバータを用意しました。スイッチングACアダプタを使いつつ、そのスイッチングノイズを低減させることができます。
なお、本機の電源スイッチを切ってもコンデンサに電荷が溜まっているため、POWERのLEDはしばらく点灯し続けます。ヘッドフォンプラグを差し込んだ状態ではアンプICがスタンバイ状態になり電力の消費が非常に少ないので、LEDはかなり長い間点灯したままです。
製作編
いきなり組み立てずに、一度、全体を通してご覧ください。流れを把握しておくと作業がスムーズだと思います。
回路図と部品表
回路図と部品表はPDFで用意しております。
基板
チップ部品はすべて実装済みです。
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なお、アンプIC(U3とU4のHT82V73A)は、基板屋さんでは手配できないため、私がハンダ付けました。目視とテスタで接続のチェックをしていますが、もし、実装ミスがあれば対応します。
上の写真はV.0.9基板(2024年頒布)のもので、その後、若干の変更を加えてV.1.0基板としています(2025年頒布)。
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変更箇所は、ヘッドフォンアンプのバイアス回路を若干見直したこと(簡略化、部品点数削減)と、スパーク対策(後述)を基板上に実装したこと、それと電源部に搭載できるコンデンサの数を減らして代りにインダクタをつけるようにしたことです。
アンプIC(U3とU4のHT82V73A)が私の手ハンダであることは、変りありません。ICの裏の放熱パッドもハンダ付けしています(ホットエアを使用)。このICのハンダ付けとチェックが大変なので、あまり頒布したくないのが正直なところです。
部品についての補足
本キットは、基板とケースだけの形態と、標準的な部品を同梱したおまかせ部品セットの二種類を用意しております。
下の写真がおまかせ部品セットで組んだ一例です(部品調達の都合で変更することもあります)。
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V.1.0基板の場合は概ね下の写真ような感じです。電源ジャックのそばにインダクタが搭載されており、大きな電解コンデンサは上の写真のように1000μF×4か、下の写真のように2200μF×2です(部品調達の都合次第です)。その他の電解コンデサやフィルムコンデンサはジャンク箱の中のものを使ったので「おまかせ分品セット」のものとは異なっています。
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おまかせセットでは動作に必要なすべての部品が揃っています(電源やケーブルなどを除く)。コンデンサは、高級オーディオ用というわけではありませんが、そこそこのものをセットしています。なお、部品調達の都合により、セット部品の内容(メーカやスペックなど)は変わることがあります。
基板とケースのものでは、コンデンサやボリュームなどはご自分で調達していただくことになります(スライドスイッチ(2回路3接点)のものは入手性が良くないようなので、これだけは同梱します)。言い換えると、部品選択の自由度が高いわけですので、お好みのもの・こだわりのものを調達して下さい。必要な部品は部品表を参考にしてください。いくつかポイントを挙げておきます。
以下、部品の選定方法などを解説します。回路図の部品番号と照らし合わせてご覧ください。
電源部電解コンデンサ
電源部の電解コンデンサはたくさん搭載できるようにしています。直径16mmまでのものと直径13mmまでのものに対応しています。すべてに実装する必要はありません。好みで決めてください(極論すれば、一つも実装しなくても動作はします)。
背の高いコンデンサを使用する場合は、横に倒して実装します。天板までの高さは18mmですので、横倒しで使うなら直径がそれ以下のものが搭載可能です。
回路図では、容量を470μFや1000μFのように記載していますが、これは便宜的な値です。自由に決めてください。また、耐圧は10V以上で良いだろうと思います(装置の電源電圧は5Vですので)。
おまかせ部品セットでは、低インピーダンス品を採用しています(1000μF以上のもの、数個)。
下の写真は、電解コンデンサを追加実装した様子です。
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なお、コンデンサを増やすと良くなるかはなんとも言えません。変化するかもしれないし、しないかもしれない。したとしても、それが良い方向(好みの方向)かどうかはわかりません。興味があれば試してみてください。
アンプIC電源デカップリングコンデンサ
小容量のコンデンサ用のパッドは0.1μFのフィルムコンデンサを想定しており、ピン間隔は5mmです。チップコンデンサ用のパッドも用意しています(2012M、1608M兼用)。
大容量用コンデンサは直径8mmまでのものを搭載可能です。オーディオ用の電解コンデンサやOSコンを使うとよいだろうと思います。ピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しているので、適合する穴を使用してください。
ヘッドフォンアンプ、バイアス用デカップリングコンデンサ
直径5mmのものを想定していますが、他のサイズのものも使えるようにピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しています。周りのスペースが許す範囲で好みのものを実装してください。
ヘッドフォンアンプ、入力カップリングコンデンサ
AD8532のデータシートでは10μFが使用されているので、回路図上では電解コンデンサにしています。しかし、そこまで大容量である必要はないと思います。標準部品セットでは1μFのフィルムコンデンサを入れています(当然、極性はなし)。これも、ピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しています。
ヘッドフォンアンプ、出力カップリングコンデンサ
直径10mmまでのものを実装できます。AD8532のデータシートでは270μFになっています。これも、ピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しています。おまかせ部品セットでは220μFのオーディオ用のものを入れています。
スピーカアンプ、入力カップリングコンデンサ
データシートと同じ1μFにしています。フィルムコンデンサを想定しており、ピン間隔は5mmです。チップコンデンサ用のパッドも用意しています(2012M、1608M兼用)。
スピーカアンプ、VREF用コンデンサ
直径5mmの電解コンデンサを想定しており、ピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しています。
このコンデンサの容量は電源ON・OFF時のポップノイズの量に影響するようです。0.1μFではかなり大きなポップノイズが出ました。100μFではポップノイズはほぼなくなるようですが、OFF時に非常に大きなポップノイズが出ることがありました。おまかせ部品セットでは、データシートにならって、10μFにしています。
スピーカアンプ、発振防止コンデンサ
ピン間隔5mmの穴と、チップコンデンサ用のパッドを用意しています(2012M、1608M兼用)。おまかせ部品セットでは、フィルムコンデンサを入れています。
電源スイッチ兼音量ボリューム
音量調整用としてはAカーブの可変抵抗が適していると言われています。おまかせ部品セットでは、入手性の都合でBカーブのものを使用しています(個人的には、これで特段の不都合は感じていません)。
DCジャック
2.1/5.5mmのDCジャックを想定していますが、秋月には定格電流が0.5Aのものと4Aのものがあります。4Aのものを使用してください。
ケース部材の分割
ケース用の基板を分割します。手で曲げれば簡単に折れます(発注などの都合により、予め分割されている場合もあります)。基板の材質はガラス繊維ですので、折ったバリの部分は素手で触らないほうが良いと思います(運が悪いと繊維が刺さります)。
バリはヤスリで落とします。長いバリはニッパ(使い古したものや百円均一のものなど)で切り取るとヤスリがけが少なくて楽です。ただし、くれぐれも必要な出っ張りを誤って切ったり削ったりしないよう注意してください。
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初期の頒布分ではフロントパネルは穴位置をミスった(ヘッドフォンとLEDの位置を間違えている)ので、作り直してものを別途添付しています。穴位置が合わない方は処分してください。
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削った後は粉を拭き取ってください。これまでの経験では、拭き取りよりも丸ごと水洗いするのが楽です。
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ヤスリがけを少なくするために接続部分を非常に細くしているため、輸送(輸入)時に基板が割れて(分割されて)しまっていることがあります。どのみち分割して使うものですので、製作・動作には問題ありません。ご了承ください。
ケース仮組み
仮組みしてうまくはまることを確認します。とはいえ、中身が空の状態では、箱状に組み立てるのは結構難しいです。それぞれの孔と突起が上手く嵌合することを確認すれば大丈夫です。
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差し込みがきつい場合は、突起の角をヤスリで軽く削ってください。製造上、穴の角は丸くなるのでときが入りにくいことがあります。
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また、奥まで差し込めず、隙間が出てきてしまう場合は、突起の付け根を直角に削ってください。これも製造の都合で丸くなってしまうためです。
なお、基板には多少の反りがあることもあるので、完全にピッタリにとは限りません。ご了承ください。
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部品のハンダ付け
前述のとおり、チップ部品は実装済みです。なお、アンプIC(U3とU4)は、基板屋さんで部品を調達できないため、私が手ハンダしたものです。目視とテスタで導通確認をしています。また、この他、いくつかの部品は定数変更等の理由により、付け直しています。ご了承ください。
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ジャック類やVRなど足が複数あるものは、まず、足を一つだけ仮にハンダ付けして傾いていないか確認してください(傾いていれば修正)。問題ないことを確かめてから残りの足をハンダ付けします。基板から浮いてしまうとケースの穴位置と合わなくなるので注意してください。
DCジャックとターミナルブロック(スクリューターミナル)の足は長すぎて底板に当たってしまいますので、適当な長さに切り詰めます。底板までの距離は2mmです。
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LEDは90度曲げて取り付けます。パネルを仮付けして現物合せすれば良いと思います。念のため数字で表すと、基板表面 (部品実装面) からパネルLEDの穴の中心までは7mmです。また、極性に注意してください。基板上に「+」と示している方がアノードです。
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正面から見ると、左隣のヘッドフォンジャックの穴の中心と同じ高さです(。多少の誤差は問題ありません。
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写真は焦点がズレてしまっていますね…。
電源スイッチスパーク対策
電源オン時にスイッチにスパークが発生することがわかりました。その対策方法をこちらのページにまとめています。
V.1.0基板では基板上に実装済みですので、この追加対策は不要です。
動作確認
部品の付け忘れ、付け間違い、向きの間違い、ハンダ忘れ、ハンダブリッジがないかチェックしてください。また、電源とGNDがショートしていなことも確認します(チェック時には電源スイッチを入れ忘れないように)。
Line Inに適当な信号源をつなぎ、電源を入れてスピーカやヘッドフォンから音が出ることを確認します。
- Line Inは、正面一か所とと背面の二か所の合計三か所 – スイッチの切り替えもチェック
- ヘッドフォンのプラグを差し込むとスピーカからの音は消える
動作しない場合、その原因の大半は、次の三つです。
- 部品の付け間違い(向きの間違い)
- ハンダ不良
- ハンダブリッジ(ハンダくずの貼り付き)
ルーペなどを使ってじっくりと、焦らず落ち着いてチェックしてください。
ケース組立て
この順番通りでなければダメというものでもありません。ご自分のやりやすい方法で構いません。ここで示した順序は一例とお考えください。
まず、底板にビス(長い方)を通します。
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裏に適当な板を当てがいます。ケースの天板を使うのが手っ取り早いです。
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この状態でビスが上に向くようにひっくり返して置き、スペーサを取り付けます。
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部品を実装した基板を乗せ、スタンドオフで緩く締めます(スタンドオフが外れない程度に、極軽く取り付けます)。
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LEDにキャップを被せます。
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基板を持ち上げつつ、前後のバネルをはめ込みます。LEDがいい感じで顔を出すように調整します。
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前後のパネルを差し込めたらスタンドオフをそれなりに締め込みます。
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側板二枚を立てます。
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天板を被せてビスで留めます。裏のビスも締めます。プラネジですので、強く締めないでください(すぐにバカになります)。
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可変抵抗とジャックのナットを適当に締めます(強く締め付けすぎないように)。可変抵抗にはツマミを取り付けます。
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最後に底板にゴム足を貼り付けます。
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頒布
- 部品の調達の都合上、上の写真とは異なる場合があります。ネジ類も同様です。
- コストダウンのため、ほとんどの部品は海外通販で調達しています(電解コンデンサは国産品)。
- 基板に若干の色ムラがあることがあります。格安基板製造サービスを利用しているため、ある程度は仕方ないようです(ひどい場合は作り直してもらっていますが、ゼロにはならないみたいです)。より高品質な製造サービスならきれいに仕上がるかもしれませんが、コストが大幅に上ってしまいます。ご了承下さい。
- 本機のマニュアルは当ページがすべてです。紙媒体はありません。また、本機は電子工作の経験がある程度ある方を対象としております。抵抗のカラーコードやコンデンサの値の読み方など、基本的なところの説明はしていません。電子工作の基本については、こちらのページに参考になりそうなサイトなどをまとめてあります。
- 資源の有効活用のため、梱包材は再利用することがあります。ご了承ください。
- 仕様や頒布価格は予告なく変更することがあります。
- 本機の組立てや使用による怪我・事故等には責任を負いません。
【価格】
- 頒布価格
- 基板(チップ部品実装済み)+ケース: 3,200円(スライドスイッチを含む)
- 基板(チップ部品実装済み)+ケース+おまかせ部品: 5,200円
- 送料: 280円
- 支払い方法: 銀行振込
【申込みフォーム】
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