終了しました。
概要・特徴
シンプルな1W+1Wのステレオアンプです。ヘッドフォンアンプも内蔵しています。
小型でそこそこの音(音質・音量)で鳴ってくれるアンプが欲しくて作りました。そういう用途なら最近はD級アンプが一般的でしょうが、本機は普通のAB級アンプ(IC)です。出力は各ch 1W(最大定格1.5W)ですが、静かな屋内での使用なら充分な音量だと思います(スピーカの能率にも依存します)。
個人的な感想ですが、解像度が高く、楽器の音がはっきり聞こえるように感じます。
本機の特徴は4層基板を使って電源とGNDの配線を強化していることです。1層すべてをGNDに割り当てた全面ベタGNDです。電源も同様に1層専用で使用しています。このような贅沢な基板の使い方をしているアンプは、少なくともこのようなミニアンプではなかなかないと思います。また、ケースサイズにも余裕を持たせて、電解コンデンサを多数搭載できるようにしています。
キットですが、チップ抵抗やトランジスタなどの細々した部品は予め実装済みです。表面実装部品の内、自分でハンダ付けするのはICだけです(リードピッチ1.27mmの広めのものです)。
主な仕様などは次のとおりです。
- アンプICはHT82V73Aで、出力は1W+1W
- ヘッドフォンアンプは、TDA1308、または、AD8532
- 入力は2系統 – 背面(RCA)と前面(3.5mm)
- 4層基板を採用 – 電源とGNDに専用プレーンを割当て
- 電解コンデンサを大量に搭載可能
- カップリングコンデンサなどは好みのものを使用可能
- サイズは100×100×25 mm(突起物は含まず)
- 電源はDC5V(ACアダプタは1A以上のもを推奨)、ジャックは2.1/5.5mmセンタプラス
使い方
電源スイッチはボリュームと兼用です。
二系統の入力はスイッチで切り替えます。
スピーカ出力はBTLです。マイナス端子はGNDではありません。また、左右のマイナス端子も共通ではありません。マイナス端子をGNDにつないだり、左右のマイナス端子同士をつないだりしないでください。
スピーカ端子は、よくある下のようなものに合わせ、左右の端子の内側がマイナス、外側がプラスです。本機でも、本当はこういう端子を採用したかったのですが、スペースの都合で入らないため、ターミナルブロック(スクリューターミナル)にしました。
ヘッドフォンのプラグを差し込むとスピーカの音は消えます。
電源は+5Vです。1A以上の出力のものを用意してください。電源プラグは2.1/5.5mmのごく一般的なものです(センタプラスです)。できるだけ品質の良い電源をおすすめします。
なお、電源スイッチを切ってもコンデンサに電荷が溜まっているため、POWERのLEDはしばらく点灯し続けます。ヘッドフォンプラグを差し込んだ状態ではアンプICがスタンバイ状態になり電力の消費が非常に少ないので、LEDはかなり長い間点灯したままです。
製作編
いきなり組み立てずに、一度、全体を通してご覧ください。流れを把握しておくと作業がスムーズだと思います。
回路図と部品表
回路図と部品表はPDFで用意しております。
部品についての補足
本キットは、基板とケースだけの形態と、標準的な部品をセットしたものの二種類を用意しております。
下の写真が標準部品で組んだ様子です(部品調達の都合で変更することもあります)。
標準部品のセットでは動作に必要なすべての部品が揃っています(電源やケーブルなどを除く)。コンデンサは、高級オーディオ用というわけではありませんが、そこそこのものをセットしています。なお、部品調達の都合により、セット部品の内容(メーカやスペックなど)は変わることがあります。
基板とケースのものでは、コンデンサやボリュームなどはご自分で調達していただくことになります。言い換えると、部品選択の自由度が高いわけですので、お好みのもの・こだわりのものを調達して下さい。必要な部品は部品表を参考にしてください。いくつかポイントを挙げておきます。
以下、部品の選定方法などを解説します。回路図の部品番号と照らし合わせてご覧ください。
ヘッドフォンアンプ
5V単電源のオペアンプです。大電流出力のものを選んでください。パッケージはSOP-8です。AD8532とTDA1308で動作を確認しています。標準部品セットにはTDA1308を入れています。
アンプIC
HT82V73Aを使います(SOP-8)。HT82V739でも使えます(出力電力がちょっと小さく、放熱パッドがない)。
電源部電解コンデンサ
電源部の電解コンデンサはたくさん搭載できるようにしています。C6~C9は直径16mmまで、C14~C18は直径13mmまでに対応しています。
背の高いコンデンサを使用する場合は、横に倒して実装します。天板までの高さは18mmですので、横倒しで使うなら直径がそれ以下のものが搭載可能です。
回路図では、容量を470μFや1000μFのように記載していますが、これは便宜的な値です。自由に決めてください。また、耐圧は10V以上で良いだろうと思います(装置の電源電圧は5Vですので)。
搭載可能な範囲で好みのものを好みの数、実装してください。極論すれば、一つも実装しなくても動作はします。まさに、好みに合わせて、です。
標準部品セットでは、オーディオ用のものではないですが低インピーダンス品を採用しています(C6~C9のみ。C14~C18は実装せず)。
アンプIC電源デカップリングコンデンサ
C10、C26、C27は小容量のコンデンサ用で、0.1μFのフィルムコンデンサを想定しており、ピン間隔は5mmです。チップコンデンサ用のパッドも用意しています(2012M、1608M兼用)。
C11、C24、C25は大容量用です。オーディオ用の電解コンデンサやOSコンを使うとよいだろうと思います。直径最大8mmまでのものを搭載可能です。ピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しているので、適合する穴を使用してください。
ヘッドフォンアンプ、バイアス用デカップリングコンデンサ
C4、C5は直径5mmのものを想定していますが、他のサイズのものも使えるようにピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しています。周りのスペースが許す範囲で好みのものを実装してください。
ヘッドフォンアンプ、入力カップリングコンデンサ
C2、C3は、AD8532のデータシートでは10μFが使用されていることもあり、回路図上では電解コンデンサにしています。しかし、そこまで大容量である必要はないと思いますし、TDA1308のデータシートでは1μFが使用されていることもあり、標準部品セットでは1μFのフィルムコンデンサを入れています。これも、ピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しています。
ヘッドフォンアンプ、出力カップリングコンデンサ
C12、C13は、直径10mmまでのものを実装できます。AD8532のデータシートでは270μFになっています。これも、ピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しています。標準部品セットでは220μFのオーディオ用のものを入れています。
スピーカアンプ、入力カップリングコンデンサ
C20、C21は、データシートと同じ1μFにしています。フィルムコンデンサを想定しており、ピン間隔は5mmです。チップコンデンサ用のパッドも用意しています(2012M、1608M兼用)。
スピーカアンプ、VREF用コンデンサ
C22、C23は、直径5mmの電解コンデンサを想定しており、ピン間隔は2mm~5mmまででいくつか用意しています。
このコンデンサの容量は電源ON・OFF時のポップノイズの量に影響するようです。0.1μFではかなり大きなポップノイズが出ました。100μFではポップノイズはほぼなくなりますが、OFF時に非常に大きなポップノイズが出ることがありました。標準部品セットでは、データシートにならって、10μFにしています。
スピーカアンプ、発振防止コンデンサ
C28、C29は、ピン間隔5mmの穴と、チップコンデンサ用のパッドを用意しています(2012M、1608M兼用)。
電源スイッチ兼音量ボリューム
音量調整用としてはAカーブの可変抵抗が適していると言われています。標準部品セットでは、入手性の都合でBカーブのものを使用しています(個人的には、これで不都合は感じていません)。
DCジャック
2.1/5.5mmのDCジャックを想定していますが、秋月には定格電流が0.5Aのものと4Aのものがあります。4Aのものを使用してください。
ケース部材の分割
ケース用の基板を分割し(手で曲げれば簡単に折れます)、バリをヤスリで落とします。長いバリはニッパ(使い古したものや百円均一のものなど)で切り取るとヤスリがけが少なくて楽です。ただし、くれぐれも必要な出っ張りを誤って切ったり削ったりしないよう注意してください。
削った後は粉を拭き取ってください。これまでの経験では、拭き取りよりも丸ごと水洗いするのが楽です。
ヤスリがけを少なくするために接続部分を非常に細くしているため、輸送(輸入)時に基板が割れて(分割されて)しまっていることがあります。どのみち分割して使うものですので、製作・動作には問題ありません。ご了承ください。
穴の間にある小さな基板は使いません。下の写真のようにマイナスドライバを差し込んでこじればとれます(ニッパで切り取ってもいいかもしれません)。実際には、一つはすでに抜いてあります。これが何であるかは、あとで説明します。
ケース仮組み
仮組みしてうまくはまることを確認します。とはいえ、中身が空の状態では、箱状に組み立てるのは結構難しいです。それぞれの孔と突起が上手く嵌合することを確認すれば大丈夫です。
差し込みがきつい場合は、突起の角をヤスリで軽く削ってください。製造上、穴の角は丸くなるのでときが入りにくいことがあります。
また、奥まで差し込めず、隙間が出てきてしまう場合は、突起の付け根を直角に削ってください。これも製造の都合で丸くなってしまうためです。
部品のハンダ付け
前述のとおり、チップ部品のほとんどは実装済みです。回路図のPDFに部品配置図も付けていますので、参考にしてください。
アンプIC類
現在の頒布品はアンプIC類も実装済みです。こちらをご覧ください。
自分でハンダ付けするチップ部品は、アンプICとヘッドフォンドライバ(オペアンプ)です。共に8ピンのSOPパッケージで足のピッチはあまり狭くありません(1.27mmピッチ)。ただし、アンプICのHT82V73Aは裏面が放熱パッドになっているので少々厄介です。取り付け方法としては、以下の四つが考えられます。
- リフロー
- ホットエア
- シリコングリス(ハンダ付けはしない)
- 何もしない
リフロー
この中では、1番目のリフローが王道だろうと思います。本来であれば、ステンシルを使ってハンダペーストを適切に塗布してリフローするのでしょうが、残念ながらそれはできません。その代わりとして、私は、普通のハンダを基板に予め付け(予備ハンダ)、それにフラックスを塗ってから、ホットプレートで加熱しました。こちらの記事で紹介した方法です。
ポイントは、予備ハンダの量はごくわずかにすることです。加熱してハンダが溶けてきたら、上からピンセットなどで押さえてなじませます。予備ハンダの量はわずかにしたつもりでしたが、それでも横から少しはみ出てきました(これは後で吸取り線を使って除去します)。
また、すべての足がしっかりハンダ付けされていることをルーペなどを使って確認します。案外、付いてないことがあります(私の試作機ではオペアンプの足が一本ついていませんでした)。
ホットエア
ホットエアを使う場合も、リフローでのやり方とほぼ同じです。ただし、こちらは放熱パッド部だけをホットエアでつけるのが良いように思います。したがって、放熱パッド部だけにごく少量の予備ハンダし、フラックスを塗布して部品を載せ、マスキングテープで仮止めしてから、ホットエアで加熱します。
または、ICを載せずに加熱して、ハンダが溶けたところを見計らってからICをピンセットで載せるのでも良さそうです(一度やってみました)。ICの放熱パッドにフラックスを塗っておくと良いかもしれません。ICを加熱する時間が短いので素子にとっては優しいだろうと思います。ただし、足がパッドにちゃんと載るように気をつけてください。
はみ出したハンダは吸取り線で除去し、その後、足を通常の方法でハンダ付けします。
この場合も、ルーペを使ってハンダ付けの様子をしっかりチェックしてください。
シリコングリス
放熱パッドのハンダ付けは諦めて少量のシリコングリスを塗っておきます。足をハンダ付けする際に、部品をしっかり基板に押さえつけると良いと思います。
何もしない
放熱パッドについては何も考慮しません。放熱パッドはないものとして、足だけを普通にハンダ付けします。
HT82V73Aの前のモデルと思われるHT82V739では放熱パッドはありませんでした。HT82V73Aでは、放熱パッドが付いて定格出力が上がりました(HT82V739: 1W → HT82V73A: 1.5W)。ですので、大音量を出さなければ放熱パッドをハンダ付けしなくても大丈夫だろうと思います。
実際、放熱パッドのないHT82V739でも普通に使っている範囲では気になるほどの発熱を感じたことはありません。とは言え、使い方によるでしょうから、可能な限り放熱パッドを活用したほうが良いだろうとは思います。
チップ部品のハンダ付けについては、こちらの記事も参考にどうぞ。
その他の部品
定石としては「部品の背の低い順」に取り付けます。
ジャック類やVRなど足が複数あるものは、まず、足を一つだけ仮付けして傾いていないか確認してください(傾いていれば修正)。問題ないことを確かめてから残りの足をハンダ付けします。基板から浮いてしまうとケースの穴位置と合わなくなるので注意してください。
DCジャックとターミナルブロック(スクリューターミナル)の足は長すぎて底板に当たってしまいますので、適当な長さに切り詰めます。底板までの距離は2mmです。
LEDは90度曲げて取り付けます。パネルを仮付けして現物合せすれば良いと思います。念のため数字で表すと、基板表面 (部品実装面) からパネルLEDの穴の中心までは7mmです。また、極性に注意してください。基板上に「+」と示している方がアノードです。
※この写真ではLEDにキャップを取り付けていますが、キャップはケースに組み込む際に取り付ければ良いです。
あの小さな基板は?
まずは、背景。
アンプICのポップノイズを軽減するためにアンプICのスタンバイ機能を使用しています。電源オン時、少し時間が経ってからスタンバイを解除するようにCRによるリセット回路を設けていました。
これで電源オン時のポップ音はかなり軽減できるのですが、電源オフ時にノイズが発生してしまいました。ポップ音とは違い、少し長めの時間(2秒くらい?)、連続したノイズ(「コーーーッ」という感じの音)が聞こえます。おそらく、電解コンデンサからの放電で電圧が下がってくる段階でノイズが生じるのだろうと思います。
その対策として、CRによるリセット回路に替えて、リセット用のICを使うことにしました。これなら、電源低下時にスタンバイ状態に入るはずです。そのための部品を付ける基板がケース部材にあった小さな基板です。
この改造は私の方で予め済ませてあります。
この小さな基板は、念のため二つ作りました。使っていない方は不要ですので処分してください。
と、このように色々とやってみたのですが、ポップ音を完全に消すことは残念ながらできていません。かと言って、リレーを入れるのは大げさですし…。良い方法があったら教えて下さい。
電源スイッチスパーク対策
電源オン時にスイッチにスパークが発生することがわかりました。その対策方法をこちらのページにまとめています。
動作確認
部品の付け忘れ、付け間違い、向きの間違い、ハンダ忘れ、ハンダブリッジがないかチェックしてください。また、電源とGNDがショートしていなことも確認します(電源スイッチを入れ忘れないように)。
Line Inに適当な信号源をつなぎ、電源を入れてスピーカやヘッドフォンから音が出ることを確認します。
- Line Inは、正面と背面の二か所 – スイッチの切り替えもチェック
- ヘッドフォンのプラグを差し込むとスピーカからの音は消える
動作しない場合、その原因の大半は、最初にも書いたとおり、次の三つです。
- 部品の付け間違い(向きの間違い)
- ハンダ不良
- ハンダブリッジ(ハンダくずの貼り付き)
ルーペなどを使ってじっくりと、焦らず落ち着いてチェックしてください。
ケース組立て
この順番通りでなければダメというものでもありません。ご自分のやりやすい方法で構いません。ここで示した順序は一例とお考えください。
まず、底板にビス(長い方)を通します。
裏に適当な板を当てがいます。ケースの天板を使うのが手っ取り早いです。
この状態でビスが上に向くようにひっくり返して置き、スペーサを取り付けます。
部品を実装した基板を乗せ、スタンドオフで緩く締めます(スタンドオフが外れない程度に、極軽く取り付けます)。
LEDにキャップを被せます。
基板を持ち上げつつ、前後のバネルをはめ込みます。ボリュームのナットは軽く取付けます(締め付けない)。
側板二枚を立てます。
天板を被せてビスで留め、可変抵抗とジャックのナットを適当に締めます(強く締め付けすぎないように)。可変抵抗にはツマミを取り付けます。
底板にゴム足を貼り付けます。
頒布
- 部品の調達の都合上、上の写真とは異なる場合があります。ネジ類も同様です。
- コストダウンのため、ほとんどの部品は海外通販で調達しています(電解コンデンサは国産品)。
- 基板に若干の色ムラがあることがあります。格安基板製造サービスを利用しているため、ある程度は仕方ないようです(ひどい場合は作り直してもらっていますが、ゼロにはならないみたいです)。より高品質な製造サービスならきれいに仕上がるかもしれませんが、コストが大幅に上ってしまいます。ご了承下さい。
- 本機のマニュアルは当ページがすべてです。紙媒体はありません。また、本機は電子工作の経験がある程度ある方を対象としております。抵抗のカラーコードやコンデンサの値の読み方など、基本的なところの説明はしていません。電子工作の基本については、こちらのページに参考になりそうなサイトなどをまとめてあります。
- 資源の有効活用のため、梱包材は再利用することがあります。ご了承ください。
- 仕様や頒布価格は予告なく変更することがあります。
- 本機の組立てや使用による怪我・事故等には責任を負いません。
標準部品セットの内、アンプICのHT82V73Aは、一時期、日本国内ではまったく入手できない状況になっていました。そのため、メーカの直販(台湾)から取り寄せたところ、下の写真のレールで届きました。そのため、頒布品ではアルミフォイルに包んで入れてあります(国内で調達したものはリール梱包仕様です。選択はご容赦下さい)。
【価格】
- 頒布価格
- 基板+ケース+標準部品セット: 4,300円
- 基板(チップICも実装済み)+ケース+標準部品セット: 4,800円
- 基板+ケース: 2,500円
- 送料: 280円
- 支払い方法: 銀行振込
【申込みフォーム】
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こちらにご入力いただいたメールアドレス宛に、追って、振込先等をお知らせします。入力ミスのないようお願いします。また、ここにご住所等は書かないようにお願いします。
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