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NanoVNAのケースを作った際に、「余った土地」を利用してLやCを測定するアダプタと簡易キャリブレーションキットを作りました。
申込みフォームはこのページの最後です。
L/C測定アダプタ
概要
全部で三つのバリエーションがあります。 現在はタイプ3と4の二つのバリエーションがあります。
【タイプ1】
簡易的なものです。アダプタ上でOpen/Short/Loadキャリブレーションができるようになっており、いちいち付け替える必要がなく、楽です。なお、測定の実用域はHF帯程度です(高い周波数では、このジグによる特性への影響が大きくなります。言い換えると、部品の特性を見ているのかジグの特性を見ているのかわからなくなるということです)。
【タイプ2】
タイプ1と組合せて使うアダプタです。
タイプ1ではキャリブレーションを楽に行えるように基板上にその回路を実装しておりますが、そのためにキャリブレーション点と測定点とがズレてしまいます。これが原因で、高い周波数での測定では誤差が大きくなります。
この問題を解決するために、タイプ1での測定点(ワンタッチターミナル)でキャリブレーションを行うものが、このタイプ2です(タイプ2アダプタ単独では使えません)。
【タイプ3】
より高い周波数で使えることを目指したものです。アダプタ上にキャリブレーション回路を載せるのは、残念ながら諦めています。
写真の手前に写っている小さい粒がキャリブレーション用の50Ωです(100Ωのチップ抵抗を二段重ね)。 キャリブレーション用の抵抗は49.9Ωのものに変更しました。
【タイプ4】
タイプ1の基板上のキャリブレーション機構とチップ部品用の測定パッドを省略したシンプルなものです。キャリブレーションとチップ部品測定にはタイプ2を使用します。これを新たにタイプ4と呼ぶことにします。
構造がシンプルになったことによって、若干の特性向上が見られるようです(極端に大きくは違わないようですが)。
詳細と組立
各タイプの詳細情報と組立て方の説明です。
タイプ1
基板上でOpen、Short、Loadの切替えができるようにしています(ジャンパピンを使用)。
回路図を見ての通り、Openではどこにもつながっていないのと同じです。ですので、ピンを実装しなくてもよいのですが、そうすると測定時にジャンパの置き場所に困る(無くしそう)のでOpenの場所も作っています。
被測定物を接続する端子には、プッシュ式ののワンタッチターミナル、スクリューターミナル、8-pin DIPソケットの三種類が実装できるようにしています(どれか一つに決めて組み立てる)。部品セットにはワンタッチターミナルを入れています。他のものを使いたい場合は、ご自身で用意してください。
部品番号 | 部品名 | 定数等 |
---|---|---|
J1 | SMAコネクタ | オス |
J2 | ピンヘッダ | 2×3 |
(J3) | 8-pin DIPソケット | なし |
J4 | 2-pinターミナル | ワンタッチ式 |
(J5) | 2-pinスクリューターミナル | なし |
R1 | 抵抗 | 100Ω 1% |
R2 | 抵抗 | 100Ω 1% |
ジャンパピン | ||
ゴム足 |
組み立ては何も難しいところはないと思います。部品を取り付けてハンダ付けするだけです。
抵抗はリード付き部品でもチップ部品(2012Mサイズ)でも対応できるようにしています。部品セットにはリード品を入れています。低い周波数ではどちらを使っても同じです(このアダプタでは低い周波数しか測定できない)。
ジャンパの脇にピンの並び順に合わせて「OSL」と記載しています。
手前のパッド部分ではチップ部品を測定したり、穴にリード部品を挿して使うこともできます。
裏にもOpen、Short、Loadと記載しています。裏に飛び出した足はヤスリ掛けしておくと、良いと思います。
基板の端にゴム足を貼り付けます。これで、NanoVNA本体に取り付けたときに高さが大体合います。
ゴム足はサイズに合わせて切って貼ってください。この高さのゴム足は細いものが見つからなかったので苦肉の策です。ご了承ください。
タイプ2
タイプ2は、タイプ1のワンタッチターミナルの部分でキャリブレーションを行うオプションです。また、チップ部品用のパッドも備えています。
これを使うことで、タイプ1よりも高い周波数でも測定できるようになります。
部品名 | 数量 |
---|---|
スズメッキ線 | 1 |
チップ抵抗 100Ω | 2 |
組み立てはスズメッキ線と抵抗を実装するだけです。下のようにワンタッチターミナルにスズメッキ線を取り付け、そこにタイプ2の基板を取り付けると固定されるのでハンダ付けしやすいと思います。
上に飛び出したスズメッキ線は短く切ってください。ハンダ付け後にニッパで切るとハンダにクラックが生じやすくなるらしいので、切ったあとにもう一度加熱してハンダを溶かしておくと安心です。
抵抗の実装は、まず、抵抗の片側のランドに少量の予備ハンダを行います。この時点ではスズメッキ線はハンダ付けしません(抵抗のランドに必要以上にハンダが流れやすいので)。
抵抗を乗せててハンダゴテで加熱して予備ハンダを溶かし、抵抗を仮付けします。
抵抗の反対側をハンダ付けします。
このあと、両方のスズメッキ線側にハンダを流して、しっかり固定します。
さらに、もう一つの抵抗を実装します。二つの抵抗の間隔は狭いですが、並列接続ですので、ハンダブリッジしても構いません(配線長を短くするために、抵抗の間隔を敢えて狭くしています)。
最後に、スズメッキ線を2mm位カットします。
上の写真、上の段の一番手前のスズメッキ線だけはまだカットしていません。写真のピントが合っていませんが、長いのがわかるでしょうか?ワンタッチターミナルが噛み付いたところには跡が付いているのがわかると思います。そこまであれば良いので、必要以上に長い分をカットします(短くし過ぎない要注意してください。噛み跡よりも1mm位下でカットすると良いと思います)。カット後は、ヤスリを掛けて丸くしておくと良いでしょう。
タイプ2を使ってキャリブレーションを行う場合は、タイプ1のジャンパはOpenの位置に固定します。
また、キャリブレーション時での「オープン」は、リード部品を測定する場合はOpenのポジションを、チップ部品を測定する場合はチップ部品用のバッドを使ってください。ワンタッチターミナルの接点部分から測定点(ターミナル上端)までのリード線を含めるためです(チップ部品時は測定パッドの影響もあります)。
タイプ2を使ってキャリブレーションを行うとワンタッチターミナルがキャリブレーション点となります。測定時はタイプ1だけを使います。
チップ部品を測定する際にはタイプ2のチップ部品用パッドを使用します。
今になって思えば、このパットにスズメッキ線をする際にマスキングテープを貼っておくと良かった気がします。パッド側にハンダが流れていかないように。
タイプ3
基板にSMAコネクタを取り付けただけの非常にシンプルなものです。シンプルな分、精度の良い測定が期待できます。
部品名 | 数量 |
---|---|
チップ抵抗 | |
SMAコネクタ オス | 1 |
ゴム足 | 1 |
基板の組み立ての説明は不要でしょう。裏には、タイプ1と同じようにゴム足を貼り付けます。
大変なのは、アダプタ本体よりも、ダミーロード用の抵抗の組立てです。100Ω(1%)のチップ抵抗(2012Mサイズ)を二つ重ねて50Ωにします。 49.9Ωに変更したため、この作業は不要です。
何組か作ってみた経験では、「フラックスの海」の中で作業すると割と楽に作れました。
下の写真は、NanoVNAに付属していたLoad用コネクタとの比較です(自作ダミーロドは二つ写っています)。
キャリブレーションのLoadの際に、この抵抗を使います(非金属製のものでパッドに押さえつける)。Openは何もつながない、Shortはリード部品の足の切れ端など適当なものを使ってパッド間をショートさせてください。
このダミーロード作りが大変だとか、面倒な場合は、秋月の高周波用チップ抵抗を使うのも手です。サイズ違いで二つあります。自作品よりも、こちらの方が特性も良好です。必要に応じてご自身で調達してください。
【参考】
タイプ4
基本的には、タイプ1、および、タイプ2と同じです。
ベース部は、タイプ1と違って抵抗やピンヘッダ等はありません。コネクタとワンタッチターミナルをハンダ付けし、ゴム足を取り付けるだけです。→ タイプ1
キャリブレーション兼チップ部品測定パッドはタイプ2と同じですが、抵抗は49.9Ω一つだけです。ランドは二個分ありますが一つだけハンダ付けしてください。→ タイプ2
部品名 | 数量 |
---|---|
2-pinターミナル | 1 |
SMAコネクタ オス | 1 |
ゴム足 | 1 |
スズメッキ線 | 1 |
チップ抵抗 49.9Ω | 1 |
測定例
各タイプのアダプタを使って、抵抗、コイル、コンデンサを測定してみます。測定周波数の限界の参考にしてください。
【測定条件等】
- NanoVNAファームウェア: 0.7.1
- 高域特性改善改造済み
- NanoVNASaver 0.2.2
タイプ1
キャリブレーションはアダプタ上のジャンパピンを使って行います。測定時にはOpenの位置にジャンパを挿しておきます(このポジションではどこにもつながりません。ジャンパをなくさないための置き場所です)。
抵抗
50Ω(100Ω 1%金属皮膜抵抗を二本並列接続)。
※グラフはクリックで拡大します(ESCで閉じる)。
コンデンサ
100pF積層セラミックコンデンサ。
コイル
トロイダルコア(TR-10-5-5ED)に5回巻。
(参考)タイプ1旧モデル
参考として、2020年3月以前に頒布したL/C測定アダプタでも測定してみます。これは、タイプ1に相当しますが、現在のタイプ1は配線の引回しの変更とコンパクト化を行っています。
結論を言えば、現在のタイプ1の方が特性が若干良くなっていますが、いずれにせよ、HF帯程度が実用限界だと思います。
抵抗
コンデンサ
コイル
タイプ2
アダプタ自体はタイプ1を使います(Openポジション)。キャリブレーションをタイプ2を使って行います。
上は、キャリブレーション時のLoadポジションです。
測定限界周波数はどうでしょうか?誤差をどの程度まで許容するかにもよりますが、50MHz程度でしょうか?
抵抗
50Ω。測定時はタイプ1の場合と同じです。
コンデンサ
100pF積層セラミック。
コイル
トロイダルコア(TR-10-5-5ED)に5回巻。
タイプ2(チップ部品)
チップ部品用のパッドを使用する際は、キャリブレーションの際のOpenでもこのポジションを使います。
抵抗
高周波用50Ω(HPT2012-50-T1)。
測定時は、絶縁物で上から押さえつけます。
コンデンサ
20pF、積層セラミック。
コイル
チップ部品ではありませんが、リード線が短い部品ではパッドの穴を利用して測定できます。
タイプ3
キャリブレーション時は、ショートでは適当な導体を使ってください。オープンではそのまま何も接続せず、ロードでは100Ωのチップ抵抗を二段重ねにしたものを使います。
上の写真はロード時の様子です。上から絶縁物で押さえつけます(ここではセラミック製のピンセットを使いました)。
これと比較する基準となる測定結果がないので判断が難しいですが、300MHz、あるいは、400MHz程度までは、そこそこ使えると思っていいのではないでしょうか?
抵抗
高周波用50Ω(HPT2012-50-T1)。
この抵抗の特性はおそらく良いはずです。ですので、この結果は被測定物の抵抗よりも、キャリブレーションに使ったチップ抵抗(高周波用ではない一般的なもの)の影響が大きいだろうと考えられます。
コンデンサ
20pF積層セラミック。
コイル
余談
タイプ3を使ってリード部品を測定するとリード線のインダクタンスの影響を見ることができます。
リード線のインダクタンスは、概算で「1cmあたり10nH、1インチあたり20nH」などと言われているようです。
この抵抗の例では、片側約1.5cm(曲がった部分を含む)ですので、両側分で3cmですので30nH程度(インチ基準を採用すれば24nH程度)だろうと予想されます。
この測定では約20nHになっています。概算値と一致とまでは行きませんが、そこそこ近い値です。この影響で高い周波数でのVSWRは随分と悪い値になっています。VHF帯以上ではcm単位の配線が大きく影響することがわかります。
ついでに、コンデンサ(100pF)の場合も見てみます。
これも片側1.5cm程度ですので、インダクタンスは両側で20nH程度だろうと思います(抵抗での実測値から推測)。そうすると、共振周波数は以下のようになるはずです。
$$f=\frac{1}{2\pi \sqrt{LC}} = \frac{1}{2\pi \sqrt{20\times 10^{-9} \times 100\times 10^{-12}}} = 112.5 \times 10^{6} [Hz]$$
実際の測定でも100MHz(黄色のマーカ(6))の少し上で共振していることがわかります(Xが0になる周波数。|Z|のカーブもよく見るとこの周波数で最小となっています)。
数百MHzを扱う工作ではリード部品は、やはり無理そうです。
タイプ4
こちらの記事のXtalの測定はタイプ4を用いたものです。
簡易キャリブレーションキット
概要
こちらは二つのバリエーションがあります。
【タイプA】
極めて簡易的なものです。L/C測定アダプタのタイプ1と同じように、このキャリブレーションキット上でOpen/Short/Loadの切替えが行えるようになっています。実用域は、HF帯程度です。
【タイプB】
ShortとLoadを一体化したものです。NanoVNA付属のものよりも大きくなるので、紛失しにくい・見つけやすいのがメリットです。Open用はありませんが、何も付けない状態で代用します(シビアなキャリブレーションを求めなければ、実質的に大丈夫なようです)。
シンプルな構造が幸いして、かなりの高い周波数まで使えます。
【タイプC】
タイプBのコネクタを変更したものです。こちらの記事を参照してください。
詳細と組立
各タイプの詳細情報と組立て方の説明です。
タイプA
見やすくはないと思いますが、基板上にLoad、Shortのジャンパのポジションを記載しています。Open時はジャンパを外します。
部品名 | 数量 |
---|---|
チップ抵抗 | |
SMAコネクタ オス | 1 |
ピンヘッダL型3ピン | 1 |
ジャンパピン | 1 |
組立ては見ての通りですので、特段難しいところはないと思います。
なお、抵抗は基板の裏に実装します。ピンヘッダを裏につけないように気をつけてください(抵抗に干渉してジャンパが挿せません)。
抵抗を49.9Ωに変更したため、実装するのは一つだけです。
ピンヘッダを実装するとLoadやShortの印字が見づらくなりますが、裏に抵抗がある側がLoadポジションです。参考まで。
Load側の特性は次の通りです。
これは、NanoVNA付属のキャリブレーションキットでキャリブレーションを行った状態で、当キットのLoad側を測定したものです。30MHz位までは実用域だと思います。50MHzも許容範囲かもしれません。
タイプB
こちらもシンプルなものですので、組み立てに悩むことはないだろうと思います。
部品名 | 数量 |
---|---|
チップ抵抗 100Ω | 2 |
SMAコネクタ オス | 2 |
熱収縮チューブ | 1 |
基板には熱収縮チューブを被せて保護します(熱収縮チューブの長さは現物合せで調節してください)。上の写真、分かりづらいと思いますが、透明の熱収縮チューブを被せています。ヒートガンがなければ、ガスコンロで遠火で加熱しても上手く収縮してくれます(熱くなりますので、ラジオベンチ等で掴んでください。加熱時、くれぐれも落とさないように)。「オール電化でガスコンロがない…」という場合は、何か工夫してください。
Load側の特性です。
VSWRは450MHzで約1.03、900MHzで約1.05と良好です(期待以上です)。
タイプC
タイプBと同様です。コネクタが違うだけです。
部品名 | 数量 |
---|---|
チップ抵抗 100Ω | 2 |
SMAコネクタ メス | 2 |
熱収縮チューブ | 1 |
測定結果を掲載したいところですが、NanoVNA付属のキャリブレーションキットを使うと、キャリブレーションの際にSMA-J – SMA-J変換コネクタが入ってしまうため、その影響を受けます。そのため、タイプCの測定にならないので省略します。
各オプションの選び方
L/C測定アダプタも簡易キャリブレーションキットも複数あってどう選べが良いかわからないという声をいただきました。それぞれ使い所があります。以下にざっくりと説明します。詳細は上の測定例をご覧ください。
- L/C測定アダプタ
HF程度の周波数で使用するならタイプ1。もっとも手軽です。もう少し上の周波数で使うならタイプ2。キャリブレーションがやや面倒。- タイプ1と2は終了し、二つを合せたタイプ4に移行しました。
- 数百MHzで使う場合はタイプ3。キャリブレーションがすごく面倒。
- 簡易キャリブレーションキット
- HF程度の周波数で使用するならタイプA。とても楽です。
- それ以上の周波数(数百MHzまで)で使う場合はタイプB。 コネクタ違いでタイプC。
いずれも、簡単に使えることと高い周波数での精度のトレードオフです。簡易キャリブレーションキットのタイプBの操作性はNanoVNA付属のキャリブレーションキットと大差ないですが、サイズが大きいため、紛失しにくいと思います。
頒布
【注意事項】
- 部品の調達の都合上、上の写真とは異なる場合があります。
- コストダウンのため、ほとんどの部品は海外通販で調達しています。そのため、抵抗のカラーコード表示が読みづらい(印字が薄い、偏ったり潰れたりしている)ものがあります。何卒、ご了承ください。
- 本機のマニュアルは当ページがすべてです。紙媒体はありません。また、本機は電子工作の経験がある程度ある方を対象としております。電子工作の基本については、こちらのページに参考になりそうなサイトなどをまとめてあります。
- 資源の有効活用のため、梱包材は再利用することがあります。ご了承ください。
- 仕様や頒布価格は予告なく変更することがあります。
- 本機の組立てや使用による怪我・事故等には責任を負いません。
【価格】
- L/C測定アダプタ
タイプ1: 450円終了タイプ2: 550円(タイプ1込み)終了- タイプ3: 350円
- タイプ4: 500円
- 簡易キャリブレーションキット
タイプA: 250円 終了タイプB: 450円終了タイプC: 400円終了
- 送料: 230円
- 支払い方法: 銀行振込
※チップ抵抗は多めに入れておきます。
【申込みフォーム】
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