1µHより小さいインダクタンスを測りたいと思って、秋月で売っているDE-5000を導入した。
導入前の騒動
それまでに一騒動(?)あって、一旦は購入を諦めた。というのは、仕様ではLの測定レンジが「20.000µH(最小分解能0.001µH)~2000H」となっており、測定可能な最小値が明記されていないことが発端。そこで、秋月の問合せフォームから「測定可能最小値を教えて欲しい」旨の質問を送ったところ、返ってきた回答が「20.000µHから2000Hの間を最も細かい間隔で0.001µH毎に計測できるという意味」とのこと。念のため、「それでは、抵抗の場合は20.000Ω未満は測定できないということか」と再確認したら「そうだ」との内容の回答がきた。いくら分解能が高くても、最小値がこれでは目的に合致しない。
という話をTwitterでつぶやいたところ、実際に使っている方から「それよりも小さい値も測れている」という情報を頂いた。やはり、私の思っていた「レンジ」の概念はあっていたようだ。秋月に質問してかえって混乱してしまった。こんなことなら、最初からTwitterで問いかけてみればよかった…。
電池ボックス
そんなこんながありつつも購入したので、早速使ってみる。まずは、電池を入れる。が、これが厄介。なんと、ネジを四本も外さなきゃいけない。
ついでに、電池の向きもわかりにくい…。電池(006P)の大きさからDE-5000の大きさが何となく分かると思う(デカイ)。
キャリブレーション
測定前にキャリブレーションが必要らしい。特に微小なものや極端に大きいものの場合は必ずとのこと。ということは、中庸な値ならキャリブレーションしなくてもいいと言うか、まぁ、それなりの値を出してくれるのだろう。細かい制度が必要になったらやればいいくらいかな。本当は毎回やるのがいいのだろうけど、時間がかかるので煩わしいというのが本音。
ともかく、キャリブレーションしてみる。
まずは、下の写真のように測定端子をオープンに。ここでは、オプションのテストリードTL-21を付けている。普通のバナナ端子のテスト棒でも使えそうだけど、せっかくの高精度を活かそうと思ったら専用品が良さそうなので一緒に買った。「CAL」ボタンを長押しすると、この写真のように「OPEn」の表示が出る。
再度、「CAL」ボタンを押すとオープン状態でのキャリブレーションが始まり、画面はカウントダウン表示が出る。
待つこと30秒、オープンでのキャリブレーションをパス。
もう一度、「CAL」ボタンを押すとショート状態のキャリブレーションに移行。テストリードをショートさせる。
再度、「CAL」ボタンを押してショートでのキャリブレーションを開始。
これまた、待つこと30秒。ショートのキャリブレーションをパス。
この後、もう一度「CAL」ボタンを押すと、キャリブレーションモードから抜けて、通常の測定状態に入れる。
これで、キャリブレーションが済んで精度の高い測定ができるわけだけど、見ての通り、大変面倒。なんだかんだで2分くらいかかる。途中で止めることもできないようだし。なので、ちょっとした測定くらいならキャリブレーションしなくてもいいかなと思ったりもする。実際、キャリブレーションしないで測ってみてもそれらしい値を表示してくれたし。
いろいろ測ってみる
せっかくなので、いろんなものを試しに測定してみる。基本はオートモードなので、LCRは自動判別。だまってつなげは結果が出る。
抵抗
こんな感じで測定。抵抗器は、いずれも1%精度のもの。
10Ω
20.000Ω未満だけど、ちゃんと測れている。
100Ω
1kΩ
10kΩ
100kΩ
680kΩ(手持ちの最も高い値の抵抗)
コンデンサ
積層セラミックコンデンサ
精度は5%のもの。
10pF
100pF
1000pF
フィルムコンデンサ
こんなふうに、直挿しもできる。が、これだとキャリブレーションをどうするのか?オープンはいいけれど、ショートはどうする?適当なリード線でショートさせればいいのかな?
0.1µF、5%
1µF、精度不明
チップ積層セラミックコンデンサ
ここで、オプションのチッププローブTL-22を投入。この際、一応キャリブレーションを行った。オープン時はいいのだけど、ショート時はずっと握り続けていなければならないのは案外苦痛。
0.1µF
10µF
チップ積層セラミックコンデンサはずいぶんと誤差が大きい。これについては、原因がわかったので、別記事で。
電解コンデンサ
テーピング品だったので、チッププローブで。
10µF
バラ品は直挿し。
100µF
そういえば、電解コンデンサの容量は120Hz時で規定されているようなので、オートモードを抜けてCモードにし、測定周波数を変えてみる。
100µF / 120Hz
100µF / 1kHz
100µF / 10kHz
周波数が上がると容量が落ちてくることがわかる。オーディオ帯域でも表示容量は確保されない。こういう数字を目の当たりにすると、ケミコンはカップリングに使いたくなくなる。もっとも、周波数が上がれば容量が小さくてもインピーダンスは低くなるわけだが。
100kHzでは測定範囲外
ここまではシリアルモード。数字の前に「Cs」の表示。
パラレルモードでも測定してみる。数字の前の表示が「Cp」に変る。
100µF / 120Hz
100µF / 1kHz
100µF / 10kHz
100µF / 100kHz
パラレルモードでは、100kHzでも値が表示された。
1000µF / 120Hz
1000µF / 1kHz
10kHzでは測定範囲外
一応、パラレルモードにしてみたけれど、10kHzではこちらでも測定範囲外。
コイル
マイクロインダクタ
3.3µH
オートモードでは抵抗と判定された。奇しくも1Ω未満を試した結果に。
Lモードにして測定し直し。
3.3µH / 1kHz
3.3µH / 10kHz
3.3µH / 100kHz
10µH / 100kHz
ラジアルリード
47µH / 100kHz
100µH / 100kHz
100mH / 1kHz
100mH / 10kHz
100mH / 100kHz
これは測定範囲外。
フェライトビーズ
ジャンクで入手したリード付きフェライトビーズ
2µH相当のようだ
トロイダルコア
FT240-43にRG-58A/Uを13回巻きしたもの。W1JR巻なので回数の数え方がよくわからないが…。
芯線側
編組線側
どちらもほぼ同じ値。
計算サイトによれば、13回巻きだと約182µHになるようだ。134µHは11回巻き強に相当。計算どおりにはならないのか、それとも、同軸だからか?いずれにしても、トロイダルコアを使ったインダクタンスは都度実測した方が良さそう。
まとめ
まとめと言うほどでもなけど、DE-5000の使い方が大体わかった。不満な点は、電池の交換が面倒、キャリブレーションが面倒、思ったよりデカイ、画面下部のバーグラフがなんだかよくわからない、といったところ。
【追記】シリアルモードとパラレルモード
下記KeysightのFAQによれば、コンデンサを測定する場合、測定対象物のインピーダンスが10kΩ以上ならパラレルモード(並列)、10Ω以下ならシリアルモード(直列)を使う。10Ωから10kΩの間の場合は(可能なら)メーカの指示に従うそうだ。インダクタの場合も同様。
- コンデンサ
- 小容量(インピーダンス大): パラレル
- 大容量(インピーダンス小): シリアル
- コイル
- 小インダクタンス(インピーダンス小): シリアル
- 大インダクタンス(インピーダンス大): パラレル
LCRメータでコンデンサを測定する時の最適な回路モードはCsまたはCpのどちらですか?
https://www.keysight.com/main/editorial.jspx?cc=JP&lc=j…
また、三和のLCRメータの取説では、10kΩを超えるならパラレルモード、10kΩ以下ならシリアル(シリーズ)モードとある。
DE-5000で設定可能な周波数は100kHzまで。この周波数を考えると、パラレルモードを使うのは微小なコンデンサくらいか?基本的には、シリアル/パラレルのモードも自動判定してくれる。上の結果を見ると、1000pFまではパラレルになっており、それより大きいものはシリアルになっている。電解コンデンサを無理やりパラレルモードで測定してみたのは無意味だったのだろう。
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