
モバイルバッテリを電源として使う際の課題
モバイルバッテリは手軽な5V電源として便利そうですが、実際に使ってみると「勝手に電源が切れる」という問題に出くわします。モバイルバッテリの元来の用途はスマートフォンの充電。充電が終ると電流が流れなくなり、モバイルバッテリはそれを検出して電源を切ります。モバイルバッテリとしては当然の動作を行っているわけですが、これが仇となってしまっているわけです。
ではどうするか?
最近ではそうした問題に対処した「低電流モード」という機能を備えたモバイルバッテリも販売されています。
ですので、これを調達すれば問題解決です。
新規調達で探しているのならそれでいいですけど、すでに持っているモバイルバッテリをなんとか活用したいですよね?
オートパワーオフは、電流が流れなくなった(少なくなった)ことを検知して発動します。流れなくなったと言っても直ちに切れるわけではなく、しばらく経ってから電流を遮断します。
手近にあるモバイルバッテリをいくつか(8台だったかな?)調べてみたところ、モデルによって早いもので20秒、遅いもので3分ほど経過すると、電源が切れるようでした(多くは20~40秒の範囲。1分を超えるものは少ない)。

また、通電を続ける電流の下限値は80mA程度のようでした。とはいえ、こちらはあまり詳しくは調べておりません。ある一台を調べたところ、「50mAだと切れて、100mAだと切れない。80mAでも大丈夫」という結果で、他のいくつかのモバイルバッテリでも80mAで試したら大丈夫だった、という程度の実験です。
ならば、常に80mAほど流し続けていれば電源が切れることなく使えるはずです。それなら抵抗を並列に入れるだけで簡単に実現できます。しかし、ただ単に電気を食っているというのがなんとも…。それこそ「無駄な抵抗」です。
概要・特徴
上記の実験を踏まえて開発(というほど大げさでもないですが)したのが本装置です。

主な仕様は以下の通り。
- 定期的に大きな電流を流す
- 約6秒間隔
- 流す時間は0.5秒程度
- 電流は80mA(設定によって、120mA、160mAも可能)
- 小型
- 基板サイズは14.0 x 20.5mm、厚さは3mm弱
- 端子間隔はユニバーサル基板ピッチ
- 完成モジュール
- 自作装置内などに簡単に組込み可能(上の写真の左側)
- USBコネクタ基板も用意(汎用アダプタとして使用可能、上の写真の右側)
- 動作確認LED付き
オートパワーオフが働くまでに短いものでも20秒程度の時間があることがわかっていますので、その時間内に短時間だけ大きな電流を流す、ということを繰り返します。時間間隔は20秒ですとギリギリですし、もっと短いものもあるかもしれないので半分の10秒程度を目指しました。しかし、実際には部品の都合により、実際の動作はもっと短い6秒程度になっています。6秒のうち、大電流が流れるのは0.4秒程度ですので、常時流しているよりも1/15の消費電流ですみます(回路自体の動作電流もあるので、実際にはもうちょっと多く使いますが)。
下の図が実際の動作の様子をオシロスコープで見たものです。個体によってバラツキがありますが、この例では約5.7秒間隔で約0.4秒間だけ大きな電流を流しています。


制限事項
電流が多く流れると、それに伴って若干の電圧降下を生じます。モバイルバッテリの内部抵抗もその要因ですので、モバイルバッテリによって電圧の降下幅は異なります。下の例では上の青が電源電圧で、本モジュルールがオンになったときの降下電圧はそれぞれ66mVと44mVです。


電源電圧の変動にシビアな装置では、使用前に充分検討してください(もっとも、数百mV程度の電圧変動が気になるような装置なら、モバイルバッテリなどではなく、しっかりした安定化電源をそもそも使うべきだとは思います)。
すべてのモバイルバッテリで、オートパワーオフのキャンセルを保証するものではありません。期待通りに動作しない可能性があることはご了承ください。
なお、本装置は5V専用です。USB PDを使用して高い電圧を出すような用途には使用できません。
また、一般的なお約束ですが、本装置の使用による他の装置の故障や事故等に関しては当方は責任を負いません。ご自身の判断でお使いください。
使い方
本装置の提供形態は、二種類です。
- 組込みモジュール
- USBアダプタ
どちらも電源につなぐだけです。電源スイッチなどはありません。電源につないでいる間、常に動作します。
動作中はLEDが点滅します(ダミー抵抗に電流が流れている間、点灯)。起動後の最初の点灯までは10~15秒程度、その後は約6秒(5~7秒程度)で点滅します。
組込みモジュール
モジュール自体は完成品です。自作装置等に組み込むだけで使用できます。詳細は製作編をご覧ください。

USBアダプタ
上記のモジュールにUSBコネクタ(Type-A)を付けたものです。

上にも書きましたが、電源スイッチなどはありません。接続するだけで動作します。つないでいる間は常に動作しますので、使用しないときはモバイルバッテリから抜いてください。
上の写真の中継コネクタのように使うタイプの他に、USBケーブルのように使うタイプ(2.1/5.5mmプラグ付き、センタプラス)の二種類があります。詳細は製作編をご覧ください。
製作編
回路図、および、共通事項
※完成品のため回路基板の部品表はありません。
品名 | 数量 (中継タイプ) | 数量 (ケーブルタイプ) | 数量 (ケーブルなし) |
---|---|---|---|
MBHT01モジュール | 1 | 1 | 1 |
USBプラグ | 1 | 1 | 1 |
USBレセプタクル | 1 | 0 | 0 |
プラグ付きケーブル (2.1/5.5mm) | 0 | 1(約50cm) | 0 |
結束バンド(2.5mm) | 0 | 2 | 0 |
基板 | 1 | 1 | 1 |
熱収縮チューブ | 1 | 1 | 1 |
回路自体は、定番タイマIC「555」を無安定マルチバイブレータで使った単純なものです。一定時間ごとにMOSFETをONしてダミー負荷(抵抗)に電流を短時間だけ流します。
標準状態では、オン時には約80mA流れます。モバイルバッテリによってはもっと電流を流さないとオートパワーオフが発動してしまうものもあります。その場合は、JP1とJP2をハンダでショートしてください。一つあたり、約40mAが追加されます。両方ショートすると総合計で約160mA流れます。

なお、本モジュールは5V専用です。USB PDを用いて高い電圧を使用する装置では、本モジュール用に三端子レギュレータ等で5Vを生成すれば使えると思います。ただし、動作は確認していません。
組込みモジュール
自作装置等に組み込んでお使いください。
下に寸法図を示します(上面図)。端子間のピッチはユニバーサル基板(2.54mmピッチ)に合わせています。左上のVが+5V、その他の三つのGがGNDです。動作上はGNDは一つつなげば大丈夫です。残りの足は基板の固定用として使ってください。

USBアダプタ
本モジュールと、USBコネクタを搭載できる基板をセットにしたものです。モジュール本体は完成品ですので、モジュールとUSBコネクタを取り付ければ完成です。USBコネクタの一方をケーブル直出しにすることもできます。


ベースとなる基板(黒い基板)はバリがあります。ヤスリで削ってください。下の写真はバリを削ったあとです。

ベース基板とモジュールにスズメッキ線等(抵抗などの足の切れ端で充分)を差し込んででハンダ付けして下さい。


USBプラグは基板と一直線上になるように(傾かないように)取り付けてください。なお、ギリギリの寸法で作ってあるため、プラグの足が穴に入りにくいかもしれません。そのような場合は、基板の端面をヤスリで少し削ってください。


※赤いものは写真撮影のための台です(ドライバの握り部)。
USBレセプタクルは足が少し長めですので、短く切ってください。

ケーブルを取り付ける場合は、基板上の極性表示を確認してください。ケーブルは結束バンドで固定します。

動作確認を行ない(必要に応じてジャンパをショートし)、最後に熱収縮チューブを被せます。前出の写真を参照してください。
頒布
部品の調達の都合上、上の写真とは異なる場合があります。
コストダウンのため、ほとんどの部品は海外通販で調達しています。
基板に若干の色ムラがあることがあります。格安基板製造サービスを利用しているため、ある程度は仕方ないようです(ひどい場合は作り直してもらっていますが、ゼロにはならないみたいです)。より高品質な製造サービスならきれいに仕上がるかもしれませんが、コストが大幅に上ってしまいます。ご了承下さい。
本機のマニュアルは当ページがすべてです。紙媒体はありません。また、本機は電子工作の経験がある程度ある方を対象としております。抵抗のカラーコードやコンデンサの値の読み方など、基本的なところの説明はしていません。電子工作の基本については、こちらのページに参考になりそうなサイトなどをまとめてあります。
資源の有効活用のため、梱包材は再利用することがあります。ご了承ください。
仕様や頒布価格は予告なく変更することがあります。
本機の組立てや使用による怪我・事故等には責任を負いません。
【価格】
上にも書いたとおり、いくつかの頒布形態があります。
- モジュール単体: 500円(自作機等への組込み用)
- アダプタタイプ: 700円(両端コネクタ(プラグ、レセプタクル))
- ケーブルタイプ: 850円(USBプラグ、DCケーブル(約50cm、2.1/5.5mm DCプラグ付き))
- ケーブルなし: 650円(USBプラグのみ)
ケーブルなしのタイプは、USBプラグのみが付属しています。ご自身の都合の良い長さのケーブル、DCプラグなどを自由に組み合わせてください。
【送料】
- クリックポスト: 230円
- 普通郵便: 100円(モジュール単体の場合限定)
【支払い方法】
銀行振込
【申込みフォーム】