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レールスプリッタのシミュレーション

単電源から仮想的な正負両電源を作るレールスプリッタ。単純には二つの抵抗で分圧すればできる。では、その実力は?負荷をかけてどの程度の電圧変動があるかシミュレーションを行ってみる。その他、いくつかのレールスプリッタで同様に。

抵抗分圧によるレールスプリッタ

電源電圧は10Vで、10kΩ二つで分圧して中点をGNDとする。コンデンサは正負それぞれに1000μF。

負荷はオペアンプをボルテージフォロアにして、入力信号は1kHz・振幅2V(4Vpp)。オペアンプはNJM4580にした。負荷抵抗は25Ω(これより軽くすると出力がクリップするようなので)。負荷とする回路は一つだけだと軽過ぎるので、全部で七つぶら下げた。

シミュレーション結果。

モニタしているのは、正電源電圧、負電源電圧、オペアンプの出力電圧(一つだけ)、電源からの出力電流(電源そばの0.001Ωに流れる電流)。

10秒ほど走らせたが、電源電圧がジワーッと動いている。

そこで、100秒走らせてみた。

20秒だと怪しいが、30秒くらい経てば収束するようだ。

安定したあたりでの各波形。

正電源の中心電圧は+4.871V、負電源は-5.129V。偏りがある。リプルは約10μVpp(正電源)。

分圧用の抵抗を小さくしてみる

試しに、分圧用の抵抗を1kΩに変更してみる。

電圧が収束するのが早くなり、約3秒。リプル自体は変わらず、約10μVpp。中心電圧は±5Vに近づき、+4.987Vと-5.013V。

コンデンサを大きくしてみる

コンデンサを10倍の10000μFにしてみる(分圧抵抗は1kΩ)。

コンデンサが大きくなると電圧が収束するのに時間がかかるようで、10秒ではまだ収束していないように見える(が、面倒なので、長時間は省略)。

リプルは格段に減って、約1.4μVpp。

コンデンサを小さくしてみる

念のため、コンデンサを小さくしてみた様子もチェック。分圧抵抗は1kΩで、コンデンサを10μFに。

案の定、電圧が収束するのが早くなり、あっという間。中心電圧は+4.987Vと-5.013Vで、1kΩ+1000μFの場合と同じ。

リプルはものすごく大きくなった。約1100μVppで、1kΩ+1000μFのときと比べて、ざっくり100倍。

トランジスタを使ったレールスプリッタ

実用アナログ回路事典250(トランジスタ技術スペシャルNo.137)にあった回路。

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この中の「4-11 単電源動作の100Hz~10kHzブリッジドT型発振回路」の電源部に使われていたもの。

書籍の回路では2SC1815と2SA1015が使われていたが、シミュレーションの都合で2N3904と2N3906に変更。ダイオードもスイッチング用のもののようなので、1N4148に変えた。コンデンサは1000μF。

負荷は先程と同じ(オペアンプは実際には七つだけど省略)。

電源電圧の収束が早い。3秒位で収束している。中心電圧は、+4.989Vと-5.011V。リプルは約10μVpp。

結果としては、抵抗分圧の1kΩの場合とほぼ同じ。ただし、消費電流はこちらのほうが小さい(約4mA)。

オペアンプを使ったレールスプリッタ

これもさきほど同じ書籍から。「1-30 入力24V ACアダプタ、±12V/100mA出力の低雑音電源」の後半のレールスプリッタ部。

書籍では100mA出力のため大きめのトランジスタが使われているが、ここではそれほど大きな電流でもないので、先ほどと同じ2N3904と2N3906で。

さすがにフィードバックの効果で電源電圧がジワーッと上がって安定するのではなくて、目標値に向かって収束していく様子がわかる。とは言え、収束するのに4秒くらいかかっているように見える。

収束したあたりの電圧は、+4.9997Vと-5.0003V。先程までのものとは一桁違う。しかしリプル自体は10μVpp程度で、先程までのものと同じ。リプルはコンデンサ次第のようだ。

ただし、少しいやらしい変動がある。信号周波数とは別に、もっと大きな波を持っている。

これはフィードバックの影響なんだろうか?高速オペアンプを使えば違った結果になるかも。

この波で見るとリプルは12μVpp強で、最も悪い。オペアンプが増える分、消費電流も増える(抵抗分圧10kΩのものと比較して2mA位多い)。

まとめ

あくまでこのシミュレーションの範囲(つまり、消費電流が20mA程度の場合)であるが、複雑な回路にしても大きなメリットはなさそう。

電流の消費が許容できるなら、小さめの抵抗で分圧するだけでいいんじゃないだろうか?

リプルを減らすのが目的なら、コンデンサを大きくする(回路方式によらず)。


上の記事を書いたあとで、電源電流を調べるのにわざわざ抵抗を入れなくても電源の電流を直接見られることにづいた。電流はマイナスで表示されてしまうけど。

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