OWONの1.5GHzスペクトラムアナライザXSA815-TGを使ってみる話の続き。
今回は、無線機のスプリアスなどを測定してみる。
ちなみに、tinySA Ultraを使っての同様の話をトランジスタ技術誌 2024年5月号に寄稿した。その経験を踏まえての今回のテスト。
無線機測定
使用する無線機はIC-705。発熱の都合で出力は5Wに抑えて測定する(本来はフルパワーで測定するのだけど、今回は無線機のテスト自体が目的ではないので)。
不要発射
帯域外領域
無線機とスペアナの間には60dBのアッテネータ(40dB+20dB)を入れた。上の写真を撮影したときには40dBのアッテネータしかつないでいなかったが、測定時にはさらに20dBのアッテネータを加えた(XSA815-TGなら40dBだけでも良かったと思うが、tinySA Ultraでの測定時には40+20dBの構成で行った(行わざるをえなかった)ので、それに合わせた)。
測定は144MHz帯で実施。
$$5[W] – 60 [dB] = -23.01[dBm]$$測定値で-23.35dBm。無線機の送信電力の誤差やコネクタなどのロスを考慮すればこんなものだろう。
帯域外領域でのピークは-66.40dBc。規制値は-60dBc。当然ながら、問題なし。
tinySA UltraではRBWの最小が200Hzなので、この狭い領域を見ることができない。
スプリアス領域
第10高調波までが測定対象(145MHzなら1.45GHz)なので、1.5GHzまでをスイープしてみたが、ノイズフロアが高くて規制値の-60dBcを見ることができない。ここで、XSA815-TGならアッテネータを減らしても大丈夫(だろう)ということに気づいた。20dBのアッテネータを外して、40dBだけにする。
信号とノイズフロアの差は広くなったが、まだ充分とは言えない。そこで、RBWを小さくした。スイープ時間が長くなってしまうので、測定範囲は130~460MHzに狭めた。
測定結果は、第2次高調波が-62.27dBc。以前、この無線機をJARDの測定室に持ち込んで測定した際には約-64dBだった。また、そのときの結果から、これよりの上の周波数では高調波は見られなかったので、ここまで。
占有周波数帯幅
XSA815-TGにはいくつかの計測機能がある。占有周波数帯幅(OBW)の測定もその一つにあるので、測定してみる。
A1A
155Hz。ちなみに、JARDでの測定では144Hzだった。IC-705内蔵のエレキーのフルスピード(48WPM)で測定したので、本来(30WPM)よりも厳しい測定となっている。それがJARDでの測定結果よりも広がった値になったのだろう。
tinySA Ultraでは、RBWの下限が200Hzなので、これも測定できない。また、そもそも、OBWの測定機能はない(Channel Powerの測定機能はあるのでそれで代用可能であるが、RBWの最小値が200Hzのため結局は測定できない)。
F3E
本当は擬似音声を使うのだけど、面倒なので実際の音声で。割と高めの声を出せは擬似音声を使った測定結果と大体一致するようなので手抜きしてその方法で。
声の出し方で多少変化するが、概ね8.7~8.9kHz。声を低くするともっと小さく(狭く)なるが、逆にこれよりも広げるのは無理だった。ちなみに、JARDで擬似音声を使って測定したときには8.8kHzだった。
まとめ
これまで、XSA815-TGの基本的な操作から実際の無線機の測定までをやってみた。この機種の最大の魅力は、やはりRBWを1Hzまで狭められることだと思う。そのおかげで狭い信号も見られるし、ノイズフロアも下がる。もちろん、ハイスペックなモデルならそれくらいは当たり前だろうが価格がぜんぜん違う。
また、OBWなどの測定機能が標準で付いているのもありがたい。RIGOLのDS815-TGも本体価格は同じ程度だけど、あちらはこうした測定機能はオプション(別売)。
ただ、操作性に関しては、tinySA Ultraの方が直感的に使えると思う。もちろん、個人的にそれに慣れていることも大きいが、操作の流れがスムーズ。XSA815-TGではいちいちあちこちのボタンを押さなければならないという感じで、何かやる度に手順が多い。また、測定機能に関しても、tinySA Ultraの方が圧倒的に充実している。そのあたりは、tinySA Ultraの開発者さんが使いたい機能をどんどん入れた結果だろうが。
それと、AUTOボタンは無効化する設定が欲しい。1プッシュで入力信号に応じた設定を行ってくれるので便利ではあるが、間違ってうっかり押してしまうと、それまでの設定がパーになってしまう。確認もせずにいきなり設定を全部変えてしまうのは乱暴だと思う。ボタンが特別な位置にあるわけでもなく、他のボタンと同じように並んでいるので、間違って押してしまったことが何度もあった。その度に、設定をやり直しは気持ちの上でかなり疲れる。
願わくば、もうちょっと小型で、このXSA815-TGとtinySA Ultraとの中間的な位置づけのリーズナブルなモデルを出してくれたら嬉しい。
最後に、XSA815-TGを快くお貸しくださったT&Mコーポレーション株式会社に感謝申し上げます。ありがとうございました。
追加で、UV-K5も測ってみた。
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