QMXが組み上がったので、特性を確認。
なお、組立ての話はこちらの記事。
ターミナルアプリケーション
QMXは面白いことにシリアルコンソールを通じて状態の確認や設定ができる。LPFの特性チェックなども可能。ということで、まずは、このターミナルアプリケーションを使ってチェック。
QMXとPCをつないでターミナルエミュレータにつなごうとするのだけど、どういうわけかつながらない。同じシリアル(USB)経由でファームウェアは書き込めたのだから、接続自体はできているはず。
結局、接続手順が問題だった。QMXの電源を入れた状態でPCにつないだのではダメ。PCにつないだ状態でQMXの電源を入れる。この順でないと、PCでシリアル端末だと認識してくれない。
つながりさえすればあとはどうってことない。普通に使える。
Band configuration
各バンドの周波数範囲やLPFの選択など。大抵の設定はQMX本体単体でもできるが、これはシリアル経由で見る・設定するしかないみたい。
Audio filter sweep
80m。2400Hzあたりにディップがあるのがちょっと気になる。とは言え、これを修正する方法はなさそう。
他のバンド。30mと20mも2000Hzを超えたあたりにディップがある(周波数やディップの深さは異なる)。逆サイドバンド(LSB)は各バンドとも-60dB以下が期待値。ちょっと超えているところもあるけれど、マニュアルのも似たような感じ。
なお、このAudio filter sweepに限らず、シリアルコンソールで確認できる特性は目安とのこと。
RF filter sweep
これは受信のBPF。まずは、80m。全然ずれている。と思ったのだけど、マニュアルに載っているのもこれと同じ。「Lowバンドでは気にするな」みたいなことが書かれている。
40mは見事に入っている。30mはちょいズレ。20mはギリギリ。マニュアルに掲載されているものと比べると、40mと30mは形が違っている。20mもちょっと違う。タップの位置でも間違えたか?あるいは、コンデンサを付け間違えたとか。
先程のBand configurationを見ると、40m以下のバンドは同じBPFを使っている。60mや80m用のBPFは用意されておらず、40mのものをそのまま使っているようだ。そりゃ、そのバンドの特性が良くないわけだ。
Image sweep
80m。黄のラインがUSB。左が本来の信号で、右がイメージ。本来の信号に対してイメージは-32.0dB。
他のバンド。
なお、このテストモードに入った初回だけはどういうわけかこのようなひどい状況が観測される(毎回)。リフレッシュしたり、他のバンドを見たりすると、それ以降は問題ない。このテストモード自体の問題かな?
SWR
1.0
50Ωのダミーロードを付けて測定。少し高めに出る傾向。
2.0
100Ωのダミーロードを付けて測定。少し低めに出る傾向。
コイルの巻き方が悪いのかなぁ…?
LPF
前の記事に書いたとおり、LPF用のコイルの巻数はマニュアルの指定回数とは変えたし、20m用はコンデンサも変えたのでどうなるかと思っていたが、これを見る限りは良さそう。
送信出力
各バンドの送信出力電力を測定。電源電圧は6.4Vと9V。
バンド | 6.4V | 9V |
---|---|---|
3.5 MHz | 2.9 W | 5.4 W |
7 | 2.3 | 4.5 |
10 | 3.3 | 5.8 |
14 | 2.6 | 4.7 |
ちょっと出すぎかもと思うくらいよく出ている。
スプリアス
スプリアスの許容値は、帯域外領域では基本周波数の平均電力より40dB低い値(かつ、50mW(17dBm)以下)。
スプリアス領域では、5W以下は50μW(-13dBm)、5wを超える場合は基本周波数の尖頭電力より50dB低い値。5Wを超える場合は「50mW以下」という制限もあるが、1kWの-50dBcでも10mWなので50mW以下の制限はほぼ無意味(ちなみに、5W – 50dB = 50μW)。
詳細はこちらの記事を参照。
tinySA Ultraを使って測定する。アッテネータは60dB(40dB+20dB)。測定対象はA1A。
帯域外領域
A1Aの必要周波数帯BN(占有周波数帯幅の許容値)は0.5kHzで、帯域外領域とスプリアス領域の境界は±62.5kHz ±10kHz。したがって、帯域外領域の測定対象は基本周波数に対して-62.5kHz~-0.25kHzと+0.25kHz~+62.5kHz -10.0kHz~-0.25kHzと+0.25kHz~+10.0kHz。なお、帯域外領域の測定は無変調で行う。
3.5MHz
許容値の-40dBcに対して充分低い。ヒゲみたいなのはたくさんあるように思うが…。
7MHz
問題なし。
10MHz
問題なし。3.5MHzや7MHzに比べてヒゲが減ってかなりきれい。
14MHz
問題なし。
スプリアス領域
スプリアス領域の測定対象範囲は9kHz~1GHz。まずは無変調(連続波)でざっと見て、ピークのポイントを探す。次に、基本周波数とスプリアスをそれぞれゼロスパンでレベルを測定する(平均値)。このときは変調をかけて測定する(A1Aの場合は25ボーでの断続)。
3.5MHz
ざっと見るための9kHz~1GHz。それと、もう少し詳しく見るための9kHz~100MHz。第2次高調波が出ていることがわかる。
基本周波数でのレベルは34.0dBm。第2次高調波は-19.0dBm。その差は53.0dB。許容値の40dBを満足している。
7MHz
1GHzまでのものは保存し損ねた(100MHzより上に大きなものはなかった)。
基本波の33.3dBmに対して最も大きいスプリアスの第2次高調波が-27.4dBmで、差は60.7dB。
10MHz
このバンドは高調波が多い。一番大きいのは第2高調波。連続波で見て-50.9dBcなので-50dBcを超えてないが、余裕はあまりない。
基本波の34.4dBmに対して最も大きいスプリアスの第2次高調波が-16.3dBmで、差は50.7dB。所定の変調を掛けた状態でも-50dBcより小さい値なので大丈夫そう。
Band configurationでわかるように、10MHz帯のBPFは14MHz帯と兼用。そのため、10MHzの第2高調波である20MHzあたりは減衰量があまり大きくない。第2高調波が落としきれていないのは、それが影響しているのだろう。
それはそれとして、第3次以降の高調波も割と大きい。送信出力が最も大きいバンドであることも何か関係しているのか?
14MHz
このバンドは最も大きいのは第3高調波。連続波での測定で-60.0dBcなので大丈夫そう。また、このバンドでは下の方にもスプリアスが見える(5MHzあたり?)が、-55dBcは確保できているようだ。
基本波の34.2dBmに対して最も大きいスプリアスの第3次高調波が-24.7dBmで、差は58.9dBm。
念のため第2次高調波も測定。第3次高調波よりも小さい値で問題なし。
それから、このバンドでは基本周波数よりも下に二つほどピークが見えるが、どちらも-57dBc程度なので問題なし(連続波での測定)。
組み立ての記事に書いたように、10/14MHzのLPFは二つのCをマニュアルのものとは逆にしたが、それによる悪影響はないようだ。そもそもが逆になっていた(変更された)のは14MHzでパワーが出ないことによる。その原因はCじゃなくてLによるのではないかと思ったのは前の記事のとおりで、Lの巻数を変えてCの順を元に戻したのは正しかったのだろうと思う。4.7W出ているわけだから(パワー計の精度はわからないが他のバンドと比べて特に低いということもない)。
受信感度
tinySA Ultraをシグナルジェネレータにして、QMXのCWモードで受信する。それをイヤフォンを使って自分の耳で聞いて、トーンが聞こえるギリギリのレベルを探るという簡易的な測定。tinySA Ultraのシグナルジェネレータは-115dBmまでしか絞れず、これだとどのバンドも聞こえたので20dBのアッテネータを入れる(下の表はアッテネータを含めた値)。
バンド | |
---|---|
3.5 MHz | -126 dBm |
5 | -125 |
7 | -133 |
10 | -127 |
14 | -126 |
RF filter sweepのカーブを見て予想した通り、7MHzの感度は良いし、3.5MHzや5MHzの感度はちょっと低い。10MHzや14MHzもBPFのセンタからちょっとズレているので感度がちょっと低めなのかな?改善の余地はありそう。すべてのバンドでもうちょっと下げたいのだから、コイルの巻きを一回増やすとか?あるいは、巻数を間違えて一回少ないのかも?
コメント
初めまして。
いつも参考にさせて頂いています。
ただ今、ADX-Sキットの増設申請を初めてのJARDによる保証認定願い(今まではTSS)で四苦八苦しています。
その中で、狭帯域システムのスプリアス領域の境界は150KHzから30MHzでは、BNが4KHz以下の場合、±10kHzとの認識で測定し、申請していました。
お書きになられている±62.5 kHzは30M~1GHzと思いますが。間違っていましたらごめんなさい。
ちょっと気になりましたので。
しかし、総通の無線設備規則の但し書きが多く、訳が解らなくなりますね。
ご指摘くださりありがとうございます。おっしゃるとおりですね。以前、V/U帯のものを調べたりしていたので混同していました。本文の方は訂正しました。