NanoVNAの4インチ画面版「NanoVNA-H4」をBanggoodさんから提供を受けた。結論から書くと、これはいい!
以下、実際に使ってみてのレビュー等。
外観等
主なスペック
banggoodの販売ページから抜出し。
- ABSシェル:75mm x 133mm x 18mm(突起部を除く)
- 測定周波数:50KHz~1.5GHz
- RF出力:0dbm(±2dB、基本波)
- 周波数精度:<2ppm
- 周波数安定性:<0.5ppm
- 測定範囲:70dB(50kHz-300 MHz)、60dB(300M-900MHz)、40dB(0.9G-1.5GHz)
- ポートSWR:<1.1
- ディスプレイ:4 “TFT(320 x 480)
- USBインターフェイス:USBタイプC。通信モード:CDC(シリアル)
- 電源:USB 5V 200mA。最大充電電流1A
- キャリブレーションポイントの数:101(固定)→ その後、401まで拡張された
- スキャンポイントの数:101(固定)→ その後、401まで拡張された
- ディスプレイトラッキング:4、マーキング:4、設定の保存:5
- Sパラメータ、電圧定在波比、位相、遅延、スミスチャート、時間領域分析などの測定
要するに、基本、画面がでかい(4インチ)NanoVNA。
また、この他にも特性が改善のための変更がなされているらしい。
- 再設計された電源管理回路は、電源ノイズ、USB電源干渉、および充電電流を削減します。
- PCBレイアウトの改善。
これは期待が持てそう。詳細は、こちら。
開封の儀
立派な硬い箱入り(高級チョコレートのような)。でも、これをビニル袋に入れただけで送られてきたので、残念ながら箱がベコベコ。この辺りは文化が違うとしか言いようがない。
内容物は、本体の他に、キャリブレーションキット、同軸ケーブル×2、USBケーブル(二種類)、ストラップ(簡易スタイラス付き)、マニュアル(メニューの地図みたいなもの)。本体のケースは結構しっかりしている感じ。
LEDの穴がちっこい。問題はないけど。
USBポートはこちら側。
底面にはネジが見える。
サイズ比較。ふた回りくらい大きいという感じ。
開腹の儀
裏からビス四本で留まっているだけのようなので、早速開けてみる。
「ありゃ、スペーサが外れたか?」と思ったけど、接着されていた。ケースを押されても凹まないようにかな?よくわからない。
ファームウェアのバージョンは、0.5.0。ここで確認する必要もないんだけど、なんとなく。
RF部はしっかりシールドされている。バッテリは1,950mAh。従来のものは400~500mAh程度(入手するたびに様々)だったので大体四倍。これだけ大容量なら結構持ちそう。
画面上部、空きパターンがある。SDカード用らしい。フォーラムを探してみると、SDカードスロットを付けたり、外部X’tal付けたりした別のファームウェアがあるみたい。この辺りはオープンソースならでは。興味があればこちら。
せっかくバラしたので、液晶保護フィルムを貼り付けてから再組立てした。
ギターピック状の簡易スタイラスは結構便利。ストラップはゴム紐(あまり伸びないけど)。
NanoVNAとはMCUが違う
以前からあるNanoVNAとの大きな違いは、上にも書いた通り、画面の大きさ。4インチで解像度が320×480(従来のものは2.8インチで320×240ドット)。それと、電池が大きいこと。
実は、それ以外に大きな違いがあって、使用しているMCU(ワンチップマイコン)が違う。そのため、ファームウェアの互換性がない。ソースコードは共通なんだろうけれど、バイナリ互換ではない。
ファームウェアはhugen79氏のGitHubで公開されている。
「NanoVNA-H4」と記載されているものがそれ。現時点(2020年7月1日)では、最新版は2020年2月21日付けの0.5.0。入手した個体はこのバージョンが入っていた。
動作確認
NanoVNAの大本はedy555さんが開発なさったものなので、このNanoVNA-H4も操作方法は基本的に同じ。
キャリブレーション
キャリブレーションしようかと思ったら、出荷時点でキャリブレートされているようだ。Banggoodの商品説明を読み直したらそう書かれていた。
CH0とCH1を直結、測定周波数範囲は50kHz~900MHz。スミスチャートはほぼ真ん中に張り付いている。
ただし、この周波数範囲でキャリブレートしているようで、1.5GHzまでに広げたらグチャグチャになった。画像は割愛。なので、900MHz以上を見るなら、キャリブレーションが必要。
手順はこちらを参照。
画面(バックライト)の明るさ
CONFIGメニューの中に「BRIGHTNESS」という項目があった。
NanoVNA-H4専用の項目かも。デフォルトは上のように1800。上限は3300のよう(これより大きい値を入れても、再確認すると3300が設定されている)。結構明るくなるので、屋外でも見やすそう。
逆に下限は800。1000でもかなり暗い。真っ暗になって見えなくなることはない。
特性確認
各ポートの特性をチェック。比較対象はこちら。
Tx: 開放、Rx: 終端
スペック通り、1.5GHzでも40dB以上取れている。素晴らしい。
Tx: 終端、Rx: 終端
アマチュアバンドの1200MHz帯付近で40dB以上ある。これなら、SWRがしっかり見れそう。
ついでに、NanoVNASaverで測定したものも掲載。
これまで見てきたNanoVNAの中では最も良い結果。
測定例
以下、実際にいくつか測定してみたもの。
HPF
BC帯カットのハイパスフィルタ。
LCR共振回路
こちらの実験で使ったもの。
1200MHz 2/3λヘンテナ
SWRがちょっと高め。共振周波数はまぁまぁだけど、R分が高い。周りの影響を受けているだろうけど、それにしてもズレが大きい感じ。
と思ったけれど、どうやら、これは、USBケーブルの影響みたい。USBケーブルを外して内蔵バッテリで動作させるとこうなった。
R分が下がり、それによってSWRも下がった。USBケーブルをつないでいないので、これは写真。色々反射して見ずらいがそれはしょうがない。
ついでに、N1201SAで測ったものがこれ。以前の再掲ではなく、改めて測り直した。
完全一致とは行かないが、まぁ、こんなもの?どちらが正しいのかという問題もあるけれど、N1201SAは2.7GHzまでのアンテナアナライザなので、こっちの方が正しいと信じたいところ(それ以上の根拠もないわけだけど)。なお、N1201SAはPCとはそもそもつながらないので、写真で撮るしかない。
いずれにしても、これくらい高い周波数で測定する場合は、バッテリ駆動の方が良さそうという印象。
同軸ケーブル長
測定方法はこちら。
いつものRG-58C/U 10mもの。
結果もいつもと同じ。
その他、雑感など
やはり、何と言っても、ディスプレイが大きくて見やすい。これは大きなメリット。
反面、大きいし、バッテリも大容量のため、重くなてってしまった。これはトレードオフだからしょうがない。
edy555氏のファームウェアが使えないがイタイ。氏の最近のファームウェアは機能が追加されているし、フォントも見やすいものが採用されている。
コネクタ側、ケースから「角」が生えており、プロテクタになっている。一見良さそうだけど、指がぶつかって使いづらい。キャリブレーション時にコネクタを何度も落としてしまった。
「角」は短いので、自作の「L/C測定アダプタ」の使用は支障はない。ただし、ケースが厚いのか、「L/C測定アダプタ」のゴム足がわずかに浮く。下に高さ調整用に何か敷いた方がいいかも。
立てての使用は不安定。サイズが大きくなったこと、その割に薄いこと、ケースの側面が平らではないため。「1200MHz 2/3λヘンテナ」の測定時には何度も倒れそうになった。
と、まぁ、不満な点もあるけれど、やはり、でかいので見やすいし、1GHz超の特性も良好だし、とても気に入った。1200MHz帯用のアンテナアナライザとしてもちゃんと使えていそうだし。逆に、430MHz帯までしか使わないなら、従来のNanoVNAでも良いと思う。
同様の2.8インチモデルもあるようだけど、こっちは試していないので、詳細不明。
【補足】
NanoVNA-H4をNanoVNASaver(PCソフト)につなぐにはちょっとした工夫が必要。これについてはまた後日。
その後、新しいバージョンのNanoVNASaverではNanoVNA-H4にも対応がなされた。なので、それを使うだけでOK。
コメント
NanoVNA-H、H4ですが、約1年ぶりに最新ファームウエアが出ました。
>https://github.com/hugen79/NanoVNA-H/releases
1.0.45みたいです。ご参考まで。
ありがとうございます。ちっと覗いてきました。見やすいフォントが使われているとのことで、良さそうでですね。なかなか手が回りませんが、追って試してみようと思います。
NanoVNA-H4ですが、Aliから入手したものですがちょうど2ヶ月でお亡くなりになりました。
3週間前くらいから、電源を入れた一回目は画面が乱れて、電源を入れ直して使えるようになる状態が続く兆候がありましたが、昨日画面の表示がされなくなり、バックライトもうっすらと点灯しているだけの状態になってしまいました。LCD廻りが怪しそうな気がしたので、LCDのコネクタとかチェックしましたが改善しませんでした。
あまり不具合の情報を見かけないので参考に、
国内購入の約半分程度の価格で手に入れアンテナアナライザとして役に立ってくれたのですが、さてどうしたものか……
販売店に問い合せてみてはいかがでしょう?
手頃なアンテナアナライザーが無いかと探していたところ、これは良いと思いアマゾンでNanoVNA-H4を購入しました。早速開封の儀、設定メニュー選択であらら・・途中でフリーズ?、電源を入れなおし、また設定途中で一部のメニューが選べない、BACKを押しても戻らなくメニューが消える? 何らかのエラーかとバッテリーコネクターを抜き、しばらく放置、でも同じでした。中華製なので当たり外れを覚悟していましたが当たりの確率が高かった様です。先ほど返品しました。次は不良品に当たりませんようにと!しかし会社にあるアナライザーはチョットした高級車が買える値段、玩具みたいだけど凄い物が売ってる時代になったものですね。
残念でしたね、としか言いようがないです。次はきっと大丈夫だろうと思います。
いつもお世話になっております
コモンモードフィルターのS21Gain測定です。nanoVNA-H4本体のみでの測定は問題ないのですが、nanovna-saverを使って測定をする場合、PCに接続しているUSBケーブルに手を近づけたりすると値が変化します。
また、共振したりするとディップ点が生じるなど理想的な測定環境がどのようなものかわかりません。
そこでUSBケーブルにパッチンコアを付けています。さらに本体部のSMAコネクターの外側をアースを取りましたらディップ点がなくなりグラフの形も変わってしまうのですが。
これは正しい測定方法ではないのでしょうか。
よろしくお願い致します。
USBケーブルやその先につながったPCの影響が出ますよね。残念ながら有効な対策はわかりません。キャリブレーション時の条件と、測定時の条件を合せるのが良いのではないかと思います。
つまり、仮にUSBケーブルを手で持った状態でキャリブレーションしたのならその状態で測定する、ということです。
PCに接続せず単体で測れば、そういう余計なことに悩まされません。最近のファームウェアはかなり使いやすいので、PCにつないで使うことは私はあまりなくなりました。
概略を見るだけでしたら本体で済むのですが、データーとして残したい場合には、SDカードの使える新しいH4ということになるのですね。ありがとうございました。
本体だけで見た状態がおそらく正しいです。ですので、USBケーブルを繋いだときに、本体単体での測定結果と同じになる条件を探してみるといいと思います(私ならそうします)。その案の一つが、先程書いた「キャリブレーション時の条件と測定時の条件を合せる」というものです。
ご教授ありがとうございました。