先日、NanoVNAにELECTRICAL DELAYを設定することで同軸ケーブルによるディレイの影響を避けて測定する方法を書いた。こちらの記事。
これでは、同軸ケーブルの長さを調べ、速度係数(短縮率)を考慮して遅延時間を計算し、その値を設定していた。これでいいのだけど、いかにも面倒。もっと簡単にELECTRICAL DELAYを設定する方法を、edy555さんが教えてくれた。
もちろん問題ありません。
— TT@北海道 (@edy555) May 20, 2020
便利な使い方としては、同軸先端オープン、あるいはショートの状態で、Marker>→Electrical Delayとすると、おおよそ先端基準になります。で先端をDUTに変えて測定します。良い同軸であることが前提ですが。
あーだこーだやってみるものの、どうにも上手く行かない。どうしようもなくて、edy555にアドバイスを求めて解決した。その手順をまとめておく。頂いたアドバイスは上のツイートスレッドを参照。
DELAYを測定して、ELECTRICAL DELAYに反映する
測定の前に、キャリブレーションを行っておく(基本)。それと、速度係数(短縮率)も設定しておく。DISPLAY → TRANSFORM → VELOCITY FACTORで設定できる。例えば、0.67の場合は「67」と入力する。
DELAYの測定
今回、対象とするのは、約1.5mのRG-58A/U。(いわゆる)Mコネが付いているので、手持ちの変換コネクタの都合で、Mメス – SMAメス、SMAオス – SMAオスの二つを経由。先端は開放(切りっぱなし)。
測定に必要なトレースはDELAY(言うまでもなく)。それと、SMITHチャートも表示しておく。下の図では、PHASEも表示している。すべてCH0。
ポイントは、測定周波数範囲を狭くすること。DELAY(遅延)は周波数には依存しない(無関係)なので、どこでもいい(はず)。上の例では、1MHz~2MHzにしている。この測定範囲で位相が回っていないことを確認するために、SMITHチャートをチェックしている(半周以上回ってはダメ)。
上の例では、DLEAYは16.184ns。SCALEは見やすいように適当に設定する。
この状態でMARKER → OPERATIONS → EDLAYでELECTRICAL DELAYが設定される。
DELAYのトレースが概ね0になり、PHASEの傾きがなくなった。SMITHチャートも無限大のポイントに移動。「Edelay 13.4ns 2.70m」との表示も出ている。このケーブルの長さは実測で概ね1.5m。(二倍の)2.70mとなっているので、だいたい合っている。いちいち計算する必要がなく、簡単に設定できる。
ちなみに、TDR機能で測定すると、15.2ns、1.53mと出た(この測定の前にELECTRICAL DELAYはリセット(手動で0を設定))。edy555さんからのアドバイスによれば、TDRの方が正確とのこと。
10mのケーブル
続いて、いつも実験で使っているRG-58C/U、10m、両端BNCオスのケーブル(秋月で販売されているもの)。
ケーブルが長いので遅延も大きい(SCALEを調整している)。
ELECTRICAL DELAYの設定によって、一見、上手く調整できているようだけど、周波数範囲を広げると位相が回ってしまう。
この原因は、設定された値が10.55m(21.1m ÷ 2)と、実際の長さとの誤差があるため。手動でELECTRICAL DELAYの値を設定しなおせばもっと追い込める。最初から計算でやる必要はなく、105nsと概ねの値がわかっているので、調整は割と楽。
TDRでケーブル長を測定して、ELECTRICAL DELAYに反映する
TDRからでもELECTRICAL DELAYの設定は可能。こちらならより正確な値が設定できる。
TDR機能を使った同軸ケーブルの長さの測定方法はこちらの記事で。
マーカをピークに合わせ、先程と同じようにMARKER → OPERATIONS → EDLAYで設定できる。
グラフのピークが0に移動し、表示が「Edelay 102ns 20.5m」となった。
周波数範囲を広げてPHASEなどを見てみる。
これなら位相はあまり回っていない。先程よりもさざ波が大きく見えるが、これはSCALEが異なっているため。また、さざ波が起きるのはコネクタの影響。
「アンテナの測定はアンテナの給電点(同軸ケーブルの先)で」と言われるが、実際にそのようにするのはなかなか難しい。でも、ELECTRICAL DELAYを適切に設定すれば同軸ケーブルの先での測定と同じようにできる(ただし、同軸ケーブルによる損失があるので、実際のSWRよりは良く見える)。
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